「コーヒーの香りに誘われて……」と、しんみり書き出してしまいますが、今回、私一人なら小さな発信だったところ、こうして「浅草橋を歩く。」の船に乗り、大海原にでる感覚をとても感謝しています。このたび、ご紹介いたします『Gion(ギオン)』さんは、亡き父との思い出、忙しい母との思い出がたくさん詰まっていて、創業50年近くを迎える、浅草橋で愛され続けている喫茶店です。ギオンさんの今と昔を紐解いて、その魅力に触れてみてください。
改装してから10年
なんだか、喜び噛みしめちゃいました! さぁ気を取り直して行きますよー!
場所は、「水新菜館」「肉の池田屋」「花楽堂」が並ぶ「福井町通り」。取材した日は雨。それでもお昼どき13時半を過ぎてもお客さんの途切れる様子がない店内。なかには、予約したテイクアウト商品を取りに来る人も。切り盛りするのはマスターと、私の小学校の先輩でもある娘さんこと「ユキ」さん。さすが親子、阿吽の呼吸!
編集長と私は、オーダーのタイミングを伺いながら店内キョロキョロ。昔のお店のレイアウトを話したりしていました。
「昔はここ(現在レジあたり)がカウンターで、中でマスターがコーヒーを一杯一杯丁寧に淹れてくれていたんです。横並びのソファーは、4人掛けが3つ背中合わせにあったんです」と、私の目には当時の光景が広がりました。
勤め人から、従兄の商売の様子を見ていたこともあり、脱サラしたのが28歳。雰囲気の良い町並みと、ビジネスマンが多かったことで浅草橋に決めたそうです。聞くと、もう、改装してからも10年が経ったそうです。
おっと、オーダーしなくちゃ。
ユキさんにオススメ伺って、人気メニューの『オムライス』と『煮込みハンバーグ』に決定‼ しかし、編集長が悩んだ表情をしています……。どうやら『ペリカンパン』も食べたいそうな。
すると、ライスをペリカンパンに換えられるとのこと!
即決! 編集長感動のご満悦。よかった。
ちなみに、私が幼少期に好きだったメニューは、ピラフと重箱弁当の煮込みハンバーグ。変わらぬメニューが思い出の糸を紡いでくれます。
そして、当時はなかったメニューは、オムライスや海老のペンネグラタン。どんどん手が込んできてるではないですか‼ もしかしてハンバーグも変わってるかしら!? ワクワクしてきた‼
幸せな気持ちになれる絶品オムライス
「お待たせしました~」軽やかな優しい声と共にきましたよ~! サラダにスープにお漬物というザ・喫茶店な副菜と共に盛り付けられたオムライスが美しい。この見た目だけで、お腹が喜びで満たされていくようです。
トロトロ卵の布団にくるまった熱々ライス。ケチャップライスの濃さが悦妙、外側いっぱいのケチャップで丁度よい濃さ。個人的にこのバランス大好き!
「スプーンが止まらない」とはこのことか!ばりにあっという間に食べつくしてしまいました。
サイドが際立つ肉汁たっぷり煮込みハンバーグ
お次は、煮込みハンバーグ。こちらはライスをペリカンパンのトーストに変えてあります☆
ちなみに、オススメだけあって、オーダーする方が多かったです。この日、なんとも偶然にご近所の「HI-CONDITION」さんが隣の席に。おふたりも、私たちと同じ注文をされていました。(大盛りで!)
HI-CONDITIONとは?
モノ作りと人が好き……こだわりのハンドメイド製品がイカす「HI-CONDITION(ハイコンディション)」
できたての熱々感が最高! ハンバーグの肉汁が、デミグラスソースに旨味を加えていきます。
目を引くのは、オーブンでいい感じに焼き目のついた添えてあるパスタ。あえて味はついていません。なぜなら、デミグラスソースが絡むことで美味しく進化しちゃうから。
編集長はペリカンパンに歓喜! パンのカケラすら残さず完食です!!
「浅草橋でペリカンパンが食べられるお店まとめやりたくて」とおっしゃっていましたが、現時点でペリカンパンが食べられる取材済みのお店はこちらです↓
「SHIGERU KITCHEN」の老舗コラボ「鳥茂×ペリカン」サンドイッチはSNS映えはもちろん胃も心も満たされる! [前編]「変わらない」人間交差点。浅草橋の純喫茶『SMELL』西出栄子さんインタビュー お惣菜が人気のお肉屋「肉の池田屋」の自家製焼き豚ご飯は美味しく安くお腹いっぱい!
記憶のパズルに華が咲く
食事も後半、アイスコーヒーを飲みながらようやくマスターとお話できるくらい落ち着いたとき、ふと気付きました。「当時とグラスが一緒だ」と。またもや、記憶がフラッシュバックします。さらに、当時のギオンさんには、「10枚綴りのコーヒー券」があり、レジ横に貼ってありました。奥で洗い物するユキさんも、「あった!あった!」と話が途切れませんでした(笑)。
小学生の私(※今から30年以上前!?)は、帰宅して親がいないときはたいてい、ギオンさんに向かいました。必ずといっていいほど、母がここにいたからです。そして、そこでピラフやホットドックが食べられることが嬉しくてたまりませんでした。商売をしている両親は、ギオンさんに朝昼通うことも。マスターがそんな話もしてくれましたよ。
そんな母は、アイスコーヒーを飲み干すのがとても早く、飲み終えたらお冷を入れさらに飲み干します。最後は氷をボリボリボリ! たわいもない光景が、懐かしくよみがえってきます。父とラジオ体操に行ったあとのモーニングもここ。両親共に忙しい日は、自宅まで配達してくれたりもしました。「浅草橋に育ててもらった」と私はよく言葉にしますが、まさにそれはギオンさんのことなのです。
今でも愛される理由
いろんなお話を伺って、最近のコーヒー価格の話から、マスターはこう言いました。
「うちは一日に何度も来る人がいるからね。そんなに値段上げられないよ」
ほら、そんな話をしている間に、またお客さんがご来店……。
「いらっしゃいませ~」
「Gion (ギオン)」
東京都台東区浅草橋2-4-3
営業時間
[火曜~金曜] 昼11:00~15:00(L.O.14:30)
文:清水 百恵(Instagram/@momoe.shimizu.4)
写真:伊勢 新九朗