大盛況だった2024年の「浅草橋ハンソデ総選挙」(in 浅草橋紅白マロニエ祭り)を取り仕切り、一躍、町の有名店となったHI-CONDITION。とはいえ、そもそも同店は、浅草橋に店を構えて13年目、オーナーの長田勇次さんは、鳥越祭りでも「宮元」で神輿を担ぐほど、地元に根付いた人物でもある。
「今でもですが、地元の方がターゲットの店づくりはしていないんです。けど、これまでひたすら走り続けてきて、ようやく何か町に対して還元できるゆとりというか、余裕が生まれてきて、挑戦してみたのがハンソデ総選挙だったんです」
そんなハンソデ総選挙誕生のきっかけとなったのが、今年で10年目を迎える「ハンソデ店」。
初夏に開催されるこのイベントは、HI-CONDITIONによるオリジナルTシャツを筆頭に、夏服や雑貨、さまざまなコラボ商品が並ぶ〝ハイコン〟のメインイベント、毎年欠かさずに続けているため、浅草橋の夏の風物詩ともなっている。
「我々、Tシャツ屋さんではないんですけど(笑)、まず、私たちが何をやっているのかを知ってもらうための入り口として、Tシャツが一番親しみやすいのではないかと考えて始めました」
じつは、「ハンソデ店」は、2年前も取材させていただいたのだが、改めて、ビッグイベントとなった「浅草橋ハンソデ総選挙2024」のルーツともいえるこのイベントの魅力を、浅草橋を歩く。編集長である伊勢がとことん深堀りしてみた。
目次
今回のテーマは〝イッテンモノ〟
と、前置きが長くなりがちなのが伊勢節なのだが、今回は四の五の言う前に、まずは目玉アイテム、人気アイテムをご紹介!
毎年、バラエティーに富んだイロトリドリのTシャツが顔をそろえるのだが、今年は、「これまでで一番多い」とされる点数が出そろった。
とくに目玉アイテムとされるのが、「イッテンモノ」Tシャツ。
スプレーを吹きかけてから、シルクスクリーンで手刷りするという手法でつくられたこのTシャツは、その名の通り、〝イッテンモノ〟。「一生つくれないものをつくりたい」という思いから考案されたTシャツで、スプレーのペンキしぶきから色合いまで、すべてが手にとった一枚しかこの世に存在しない、唯一無二のTシャツなのだ。
茶器や食器など窯がつくられる〝焼き物〟と似た感覚で、店の2階にて、一枚一枚丁寧に刷りあげた。
こちらのマーブルカラーも同じくイッテンモノ。
色をミックスしているため、「やってみないとどういうカラーになるかがわからない」点が面白く、魅力的だと奈良さんは言う。
ハンソデ店は6月22日から始まっており、「スプレーは新たな試み」というこれらのTシャツは、すでに多数が旅立っているという。間違いなく今回の目玉アイテムなので、早めのご来店を、切にオススメいたす。
過去最多となるTシャツたちの一部をご紹介
そのほかにも、「この夏着たい!」と思わせるTシャツがズラリ。ここでは伊勢がこれは!と感じたTシャツを何種類かお見せしたいと思う。
まずは、こちら、「パスタ屋さん」Tシャツ(※勝手に命名)。
「もしもこんなパスタ屋があったら、どんなTシャツつくるかな?」という妄想から始まり、パスタ屋の設定を相当に練り込んでからつくられた一枚。ただかっこいいだけのデザインではなく、この一枚に〝ある物語〟が込められているのだ。どんなストーリーなのかは、現場で長田さんに聞いてみよう!
しかも、なんと、奈良さんの左手のネイルには、同じデザインのパスタ各種が……!
こういう遊び心が満載なのが、HI-CONDITIONのハンソデ店なのである。もう、これだけでささる人、多いのでは?
お次も奈良さんのネイルと同じデザインの〝ハイコン〟Tシャツ。これまたかわいい!!
5つの爪ではおさまりきらないので、「HICON」としているということで、「HICON」Tシャツと勝手に命名。
続いて、今度は、他店とのコラボTシャツ。
蔵前にある「Boon Life Base蔵前店」は、兵庫県播州産地のものづくりを発信するライフスタイルショップ。自社工場で縫製したシャツを中心に展開していて、長田さん、こちらのこだわりの縫製に惚れて、シャツの生地をポケットにしたTシャツを考案。地元のつながりをいかしたステキな一枚に仕上がっている。
こちらは、浅草を表現したTシャツ。
「タイポグラフィ」と呼ばれる、文字を絵にするデザインの手法で、「浅草」という漢字を図像化した。HI-CONDITIONは、じつは、浅草で飲食店も展開しており、「浅草」とも縁が深いため、「浅草店」でも販売できるようにとつくられた。すでに海外の方から人気のアイテムで、これはもはや東京土産!
さきほどの、「浅草」Tシャツのデザイナーがデザインしたもう一枚がこちら。
彼は台湾のデザイナーで、日本と異なる文化で育まれた感性がつくりだした、新たな「HI-CONDITION」な一枚だ。
ちなみにこのデザイナーとは、台湾に行ったときに出会い、そこから今回のTシャツづくりへと発展、「惚れた人たちと仕事をしたい」、長田さんのその思いが今回のハンソデ店でもてんこ盛りとなっている。
こちらは、奈良さんが手掛けた「SUNRISE TO SUNSET」Tシャツ。
文字通り、「朝から晩まで着てもらえる」というTシャツで、お日様の周囲を「HI-CONDITION」の文字が飾る。
海やフェスに着て行きたい! と思わせる、イカした一枚。
まだまだあります、「和柄なHI-CONDITION」Tシャツ。こちらも海外の方に人気!
色味も絶妙で、甚平や浴衣の下に仕込んでいても合いそうだ。
「いつかあなたの街で……」Tシャツ(もちろん勝手に命名)。
誰とコラボするにも、必ず会いに行くスタイルをとっている長田さんと奈良さんのおふたりが、車に乗ってとある街を目指している一枚。「これまで私たちが動物になったりキャラになったりしたデザインはあったのですが、〝人〟としてTシャツになったのははじめてなんです(笑)」と語るのは奈良さん。
これは、HI-CONDITIONファン必着の一枚ですぞー!
最後は、長田さん自ら描いた「ガガ」Tシャツ。
もともと、自ら絵を描いていらっしゃっただけに、味のあるイラストが魅力的。伊勢は、前々回のときに販売していた、「モンロー」Tシャツをゲット済み。これもいいなぁ!!!!
Tシャツ以外のアイテムも充実
ハンソデ店で販売しているのはTシャツだけではない。シャツや短パンなど、アパレルショップならではの、夏服もしかり用意されている。
まさに「入口はTシャツで……」というコンセプトの通り、店内の奥に行くにつれて、そのほかのアイテムとも触れ合える空間づくりをしている。
こちらは、これまで何度もHI-CONDITIONとコラボしてきた、淡路島にある「candy shop ICE-UP」のアイスキャンディーをちりばめたYシャツ。
このアイスキャンディー自体がHI-CONDITIONでも食べられるのがうれしい。私、これがめっちゃほしい。
奈良さんが手掛けるレディースラインの数々。
着心地良さそうな生地や、奥のカラフルなシャツもステキ!(※奥のシャツはすでに買い手が決まっているそう)
ふたりが白黒コーデで着ているのが、この夏オススメの短パン。
この「HI-CONDITION」タグをつくけたくてつくったアイテムだそう。これまた着心地よさそう!
〝長田好み〟と〝奈良好み〟
取り急ぎ、浅草橋を歩く。でのご紹介はこのあたりにしておこう。
もちろん、これですべてではなく、ほんの一部をお見せしたにすぎないが、ここまででも十分魅力的なアイテムが揃っていると感じていただけたと思う。
と、いうことで、ここで、少々、うんちくというか、もう少しHI-CONDITIONについて掘り下げてみよう。
基本的に、私たちが日ごろ、Tシャツや衣類を購入する際の決め手となるのは、〝自分好み〟かどうかや、〝流行りだから〟といったものではないだろうか。かくゆう私も、自分が着たいと思うものを着る、というスタイルでこれまでは生きてきた(※当たり前か)。
HI-CONDITIONのTシャツももちろん、見た目がイカしているか、かわいいか、自分に似合いそうか……など、通常の視点でセレクトしてくれてまったく問題ないのだが、ひとたび長田さんや奈良さんのこだわりを知ると、さらに愛着がわいてくる。「ハンソデ店」の楽しみ方は、まさにその〝長田好み〟〝奈良好み〟を知ることであり、知ることで魅力倍増で楽しむことができるのだ。
「お客さんひとりひとりと丁寧に向き合うこと」をモットーとしている長田さん、そのイズムをしっかりと引き継いでいる奈良さん、今では、ふたりそれぞれの〝好み〟にファンがいる。そして、そんなファンや、新たなお客さんに「楽しんでもらいたい」という気持ちが、至るところに感じられるのが、HI-CONDITIONが手掛けるイベントやアイテムなのである。
冒頭にて「Tシャツ屋ではないんです」という長田さんの言葉があったが、では、「HI-CONDITIONって何の店?」と、聞かれると、「自分たちでも明確な答えはもちあわせていない」のだそう(笑)。
ただただ、「そのときそのときで好きなことをしてきた」と語る長田さん、今回こうして改めて取材をしてみて感じたことは、戦国時代にひたすら〝自分好み〟を貫き通した、千利休や古田織部に重なるものがあるということだ。
彼らもまた、〝利休好み〟〝織部好み〟をうちだし、彼らのみそめられた茶器や陶器は飛ぶように売れた。
現在、世は、アパレルだけでなく、すべてにおいて〝飽食の時代〟だけに、衣類も雑貨も、あらゆる〝モノ〟があふれかえっている。だからこそ、〝何かを選ぶこと〟自体のハードルがあがってきている時代ともいえるわけで、そんなときに、ひとつの指標があるのはうれしいことでもある。
長ったらしく何が言いたいのかというと、つまりは、HI-CONDITIONが打ち出すアイテムは、私たちを楽しませようとあーでもないこーでもないと試行錯誤した結果、これまで培ってきた長田さんと奈良さんのセンスが詰まった、映画や小説と同じように楽しめる〝モノ〟たちなのだ。
ここで浅草橋を歩く。的な視点で名付けてしまおう。
HI-CONDITIONは、「エンターテイメント型アパレルショップ」であると……!
そう、私、ここに行き着きたかったー!
ちなみに、HI-CONDITION誕生秘話などは、以前の取材記事をご参照あれ↓
メインビジュアルのイラストを額装
さて、伊勢の思いもてんこ盛りなハンソデ店なので、だいぶ長く綴ってきてしまったが、最後にもうひとつ、今回の目玉アイテムのひとつを紹介しよう。
「家に写真を飾ったり、絵を飾ったりすることで、生活がすごく豊かになる」
そう信じている長田さんの新たな試みがこちらの一枚。今年のメインビジュアルでもあるイラストに、遊び心満載の魔法をかけた。
それは、毎年変化するメインビジュアルイラストを、今年は額装して販売すること。
額に入れたりという手間が足かせになって、なかなか絵画や写真を購入できない人でも、額装とセットにして販売することですぐにでも楽しんでもらえるという、お客さんに寄り添った商品づくりは、まさしく〝長田節〟ではなかろうか。
さらに、今年のテーマにふさわしく、このイラストも〝イッテンモノ〟なのだ。
「この絵自体も一枚一枚シルクスクリーンで刷っているのですが、じつは、メインビジュアルにないものが額装された絵にはありまして……」
それが、向かって右下のほうにそっと置かれている「時計」。
しかも、この時計、示す針の位置がそれぞれの絵ごとに異なっている。
購入するタイミングも人それぞれというわけで、時間で〝イッテンモノ〟を表現しているのは、粋であり、いなせだね。取材しながら思わず、「よく考えますねー!」と、そのアイデア力に脱帽した。
ちなみに、描いたのは、浅草橋ハンソデ総選挙のメインビジュアル含め、HI-CONDITIONに欠かせぬ作家「ふたば」さん。長田節に共感した彼女は、さらに〝イッテンモノ〟を強調する仕掛けを絵の中に描いてくれているというが、それはぜひとも現場でお確かめいただきたい。
最後にサクッと〝伊勢好み〟
最後がもうひとつ続くことになってしまったが、わたくし、伊勢も、一枚購入させていただいた。
いろいろと悩んだが、やっぱりパスタが〝伊勢好み〟!
なぜならば、架空のお店の設定をつくり、その物語から生まれたTシャツだから。
これは、ふだん、本をつくっている私だからこそ、共感、惚れた一枚で、ついつい長田さんにこんな提案までしてしまった。
「古書みつけで、このパスタ屋の短編小説つくりましょうよ!」
そう思いたくなるほど、この一枚はとても好き。
ちなみに長田さんからは、「そしたら、むしろ、みつけでつくる物語のTシャツをつくりましょうよ」と逆提案。
おお、これが、いわゆるHI-CONDITIONとの〝コラボ〟につながっていくわけだ!
今後、古書みつけ×HI-CONDITIONなアイテムが登場するかもしれないので、お楽しみに!!
と、しっかりとキレイにオチがついたところで、シメとしたい。
皆さん、ぜひ、期間中にHI-CONDITIONを訪れて、この夏のとっておきの一枚を見つけてね☆
「ハンソデ店’24」概要
「ハンソデ店 2024」
場所:Gallery&Studio HI-CONDITION
住所:〒111-0053 東京都台東区浅草橋2-13-2
開催期間:2024/6/22(土)〜7/7(日)
営業時間:12:00〜19:00
お問い合わせ:03-3865-3359/main@hi-condition.com
※いずれも期間中は休まず開催