創業75年の町中華!浅草橋住民に愛される「大勝軒」の「五目焼きそば/軟」を一度食べてみてほしい。

最近、よく耳にするワードの「町中華」。
昭和から続く、個人経営店の中華料理店のことを表した言葉です。
長く続くということは、地元民に愛されている証拠でもあります。
浅草橋の町中華「大勝軒」に取材に行ってきました。

物心ついたときから大勝軒に通っているという、バシっ子・モトクニとともに町中華をいただきます!

浅草橋駅から徒歩5分の町中華

「モトクニさんと取材に行くから、動画を撮影しにきて」、と、編集長の伊勢に言われて取材に同行するすることになりました。取材に行く店名を聞いてテンションが上がります!

大勝軒は何度かフラッと立ち寄って、「めちゃくちゃ美味い!」と思っていまして。
「今日は何を食べようか?」そんなことを考えながら撮影の準備をします。

「いらっしゃい!」

のれんをくぐると、大将の威勢のいい声が響きます。

まずは、「焼き豚」「メンマ」「ニラレバ炒め」の小皿料理3品を注文して、瓶ビールで乾杯!

フラッと入って、サッと飲める雰囲気も町中華の魅力ですよね!
どれを食べても「うまい!」と言い合いながら、酒が進みます。

次に注文したのは、モトクニが来ると必ず食べるという「揚ワンタン」。
揚げたワンタンに甘辛ダレが絡まった一品。
熱々パリパリの食感がつまみに最適!
子どものおやつにも良さそう。

創業は昭和21年!75年変わらぬ味

早い時間にお伺いして、まだお客さんが少なかったので大将にお話を伺うことができました。
終戦直後の昭和21年。現在の大将のお父さんが、この地で開店したのが『大勝軒』でした。大将は何年か他の店舗の手伝いをしてから、浅草橋の店舗に戻ってきたそうです。
大勝軒の周りは、焼け野原で何もないなかでの開店。その後、浅草橋は問屋街として発展し、店は繁盛したそうです。
昭和29年に、お父さんから大将に大勝軒は受け継がれました。それから60年以上、大将は大勝軒の味を守り続けています。
時代とともにメニューは変わりましたが、「えびそば」「かにそば」あたりは、開店当初から続いているメニューだそうです。大勝軒は問屋街で働くビジネスマンや、浅草橋で暮らす地元民に愛され続け、今日を迎えています。

地元民のオススメは「五目焼きそば/軟」

お店も混み始めてきたので、そろそろメインディッシュを注文することに。
編集長が選んだのは五目チャーハン。

油でコーティングされてツヤツヤになったごはんに、存在感のあるエビ。見ているだけで食欲がそそられます!
ひと口もらいましたが、非の打ち所のない町中華チャーハンでした!
いくらでも食べちゃいそうです。

ラーメン好きの私が注文したのは、開店当初からあるという「かにそば」。

とろみがかったラーメンスープの中に、カニの旨味が溶け出していて、うまい!
とろみが熱を逃さず、熱々なのも最高です!

 

そして、地元民代表のモトクニが注文したのは、「五目焼きそば」の麺軟らか。

焼きそばと五目焼きそばは麺の硬さを選ぶことができ、モトクニはいつも軟らかいほうを選ぶそうです。
麺の上にあんかけ具材が乗せられた、かた焼きそば風の焼きそば。


モトクニが食べる前に小皿に持って分けてくれました。ズルズルッとあんかけとともに麺を口に運びます。麺がかた焼きそばよりも少し軟らかく、初めての食感。他の店では味わったことのない味です。
麺が軟らかい分、麺とあんかけ具材との一体感がベストマッチ!
「こ、これは……うまいっすね!」

「だろぉ! オレはここの五目焼きそば中毒だから(笑)」
思わずうなった私に、モトクニが嬉しそうに答えました。

次は何を食べようか?迷いは尽きない!

メインディッシュを食べながら、ギョーザを注文するのを忘れていたことに気付いて、慌ててギョーザと春巻きを追加注文。

ギョーザと春巻きも間違いない味!
気付いたら瓶ビール4本が空に……。

お店に迷惑がかからないように、そろそろ退店することに。
店を出ると、ちょうど夕日が輝いていました。
「まいど、どうも!」と、大将が笑顔でお見送りしてくれました。

この文を書いて、写真を選んでいたら大勝軒の味を思い出して、また食べたくなってきました。
近いうちに再訪することを決意しながら、この文を終えようと思います。
次は、「五目焼きそば/軟」にしようか? 食べたことのないメニューにしようか?
迷いは尽きません。

地元民に愛され続ける『大勝軒』の味を、ぜひご賞味ください!

バシっ子・モトクニからの寄稿

「おいさんッ‼︎」
『おう坊主ッ‼︎』

下町のメシ屋では、どこでも当たり前に交わされる挨拶だ。
お互いの名前を知らずとも、お互いの顔を知っていて、 “いつものメニュー” も知り合っている間柄だからこそ成り立つのが、冒頭のやり取りなのだ。

大勝軒の最も古い記憶は、爺さんに連れられて来てた記憶。

ウチの爺さんは、誰からも好かれる社交性のある下町の爺さん……。
とは程遠く、ともすると取っ付きにくい頑固ジジイの様相を呈していたように思える。が、そんな爺さんの孤高の感じに惹かれ、初孫の自分は存分に可愛がられながら育った。

未就学児の孫を連れた爺さんがふらっと入っても居心地が良い大勝軒の懐はとても深い。

今でこそ、町中華などという言葉がまかり通るようになったが、昭和末期の下町といえば、そんな中華屋と洋食屋がバブル期の働き盛りの腹を満たしてくれていた。

テーブルを囲んだオトナ達はグラスを片手に興が乗ると、大皿と共に瓶ビールをスイスイ空けてゆく。中華鍋が奏でる軽快な音と、オトナ達の嬌声を縫って薫ってくる香ばしい匂いは、遊び疲れた子どもを、今か今かと急かせるには充分な効果だ。

そして、食欲の権化と化した(猫舌の)自分を嘲笑うかのように湯気を湛えた熱々の皿から、爺さんは一皿々々から取り分けてくれ、自分は瓶ビールを喉を鳴らしながら飲み干すと、熱々中華と悪戦苦闘しながらも、バクバク平らげる自分を見て、ニタリと笑いながら見つめていた。

こんな記憶が今もありありと思い出せるのは、大勝軒が連綿と続く店ながらも 、流行り廃りに左右されずに忠実に味を守っているからだろう。だから、爺さんがもう居ない今日も、一箸でプルースト現象のように、ありありとあの日の光景を呼び覚ましてくれるのだ。

大勝軒、今後とも末永く宜しく。

【大勝軒】
〒111-0053
東京都台東区浅草橋2丁目28-10
JR総武本線「浅草橋駅」東口より徒歩7分
営業時間:[月~金]11:00~15:00(L.O.14:45) 17:00~20:30(L.O.20:00)
[土]11:00~14:30(L.O.14:15) 17:00~19:30(L.O.19:00)
定休日:日・祝

写真:伊勢新九朗
文:高橋テルマ
寄稿文:モトクニ