2011年、貸しギャラリー兼工房として浅草橋でオープンし、昨年、場所を新たに、引き続き浅草橋に店を構えるGallery & Studio HI-CONDITION(ハイコンディション)。
HI-CONDITIONってどんな場所?という疑問に対して、●●のお店です!と、一言では言い現わせません。
お店に入ってまず目に入ってくるのはTシャツ、そして色鮮やかな皮製品、キャンバス地(帆布)のカバンや帽子にパンツに…2階に上がるとステンシルの素敵な絵が。ドリンクを飲むこともできます。
コンセプトを伺うと「コンセプト、ないんですよね~!」と笑う店長の長田さん。それでも、話を深く伺ううちに、HI-CONDITIONらしさが見えてきました。
様々な一面を持つHI-CONDITIONの魅力、お伝えします!
目次
ひょんなことから浅草橋へ、浅草橋に呼ばれたあの日
お店を始めて9年と聞き、浅草橋が地元の方なのかな?と思いきや、東京の方ではあるものの、ちょうど山手線の反対側のご出身。
もともとステンシルという技法で絵を描かれており、デコパージュの技法なども取り入れた作品を作っていた店主の長田さん。
耐久性の面で長く使えるものを作りたい!という思いから、革製品に興味を持ち始め、「革 問屋」で検索し、出てきたのがココ、問屋街の浅草橋でした。
それまで浅草橋のあの字も知らなかったという長田さんが、足を運んだ浅草橋にて、とある革職人のおじさんと出会います。
職人というよりアーティストといった、新しいこともどんどん取り入れ、どうやって作るんだろう?という革製品を作り出すそのおじさんの魅力にすっかりハマり、新しい世界を教えてもらいながら、お店っていいなぁ、そう思い始めたと言います。
思わず「お店、いいですね」なんて会話をしていると、ある日、そのおじさんから「隣が空いたよ!君の名前で予約しておいたから内見においでよ!」と連絡が。あれよあれよという間に、浅草橋に店を構えることになったのが2011年11月のことでした。
貸しギャラリーと工房としてスタートしたHI-CONDITION
ご自身も絵を描かれる長田さん、HI-CONDITIONは貸しギャラリーと、自身が作る工房として始まりました。とはいうものの、最初の1年、貸しギャラリーを使用する人もおらず、浅草橋との出会いのきっかけでもあった革製品を始めるもなかなか売れず、アルバイトと並行してお店をやる日々が続きます。
スプレーでステンシルTシャツを作ってみましたが、耐久性がない…、と試行錯誤の日々が続きます。そして一般的なTシャツの作り方、シルクスクリーンを導入し、少しずつ軌道に乗っていきました。
そして今でも続く、ハンソデ店、ナガソデ店という企画もこの頃から開催。展示とポップアップショップを兼ねた、買える展示です。一緒にやろうよ!と息の合った作家さんと一緒に作り上げてきました。
長く愛されるアイテムは使う人を想って作られたからこそ
ワクワクしないと売りたくないし、100%いいと思ったものを売りたい、そんなこだわりが生み出した製品は、本当に質がよく、長く使うことも考えられています。
1つご紹介すると、このキャンバス地のカバンは、汚れてしまったときに、革とキャンバス地を外して洗えるように工夫してつけられており、洗濯も承っているとか。なんと無料で!長く使ってほしいという想いが伝わってきますよね。
そんなHI-CONDITIONだからこそ、地元の人にも愛され、この地域のお母さま方が、小さいバッグをお揃いで持ってくれているなんてエピソードも。
たしかに、質がとても良いので使いやすく、遊び心たっぷりに、同じ製品でふんだんな色を揃えているアイテムは、自分の好きな色を選んでみんなで持ちたくなりますね。
作りたいものを作りたい人と作る
HI-CONDITIONの話を聞けば聞くほど伝わってくるのは、人を大事にしているということでした。
長田さんご自身も、買い物をするときに人を見て買いたいという想いを持たれており、どういう人が作っているかを知りたい、人となりをみて購入したい、とおっしゃいます。
“この生地はね、代々木八幡のAさんが作っていてね”
“岡山の職人さんとジーンズを作ってね”
“蔵前のおじいちゃんからこの部品を仕入れたんだよ”
とこだわりのハンドメイド製品の向こうには必ず人が見えるのです。
そして、買ってくれる人の存在も大きいことも伝わってきます。その場その場でできると、相手が喜ぶことをしたい!とリクエストにこたえ続け、商品開発に繋がっています。
みんなで作り上げたHI-CONDITION
このお店自体も、お客さんとして訪れた人が一緒に作り上げています。1年前に場所を新たにしたこのお店、ほとんどがお客さんや知り合いという、クラウドファンディングとしてはめずらしい比率の147名もの方に支援をいただき、改装しました。
さらには、元お客さんだった方が出入りし、棚や、扉などあらゆる場所を手作りで作り上げ、立派でかわいいお店になりました。
取材当日も、店長の長田さんのほかに作業をしている人がいて、店員かと思いきや聞いてみるともともとお客さんだった方だというから驚いたのでした。
目指すは楽しそうにやっているお店
そんな人とのコラボレーションから多くのものを生み出してきたHI-CONDITION。その源はやりたいことがいっぱいあるという長田さんの好奇心です。そしてそのやりたいことができる人と繋がったとき、形になります。
次にやりたいことはなんですか?という質問には、一緒に作る時間を持てるものをやりたいとのお答え。このコロナ禍にも、シルクスクリーンキットを作り、家でも楽しめる時間を作り出し、モノだけではなく、時間的価値を生み出しています。
売っている絵も、ただ長田さんが1人で完成させるだけではなく、一緒に完成させるものもあるとか。人々の想いが重なり、時間的価値が生まれること、それがHI-CONDITIONの気づかないうちに生まれていたコンセプトなのではないでしょうか。
何をやっているかは分からない、でも楽しそうだな、と思って欲しい、そんな長田さんの想いが人を惹きつけていることは間違いありません。
アイテムを買うもよし、自分の作品をギャラリーに飾るもよし、人と出会いに行くもよし。あなたもHI-CONDITIONで楽しい時間に出会ってみませんか?
【Gallery & Studio HI-CONDITION】
〒111-0053
東京都台東区浅草橋2-13-2
「浅草橋駅」より徒歩4分
JR総武本線(東口)/都営浅草線(A2出口)
文:ちえこじ
写真:伊勢新九朗