2021年2月25日。大人気文具店「カキモリ」の姉妹店「inkstand by kakimori」が、さらなる進化を遂げリニューアルオープンしました。
そのニュースを耳にした私たちは、オープン翌日、すぐさまお店に訪問。念願だったオーダーメイドインクづくりを体験しました♪
目次
〝カキモリファン〟に朗報!姉妹店の移転先はなんと〝あの〟場所!
やってきたのは、鳥越神社のほど近くにある「カキモリ」。
そうなのです、今回ご紹介するお店の移転先は同店の中2階。本店に姉妹店がドッキングするという形で「inkstand by kakimori」はリニューアルオープンしたのです。
これまで「カキモリ」と「inkstand by kakimori」は徒歩約8分の場所に点在していました。両店に行きたいとは思いつつ、時間や距離の関係で片方を断念したという方もいたのではないでしょうか。
実は私もその1人。なので、今回のリニューアルオープンは、いち〝カキモリファン〟にとってはうれしいニュースでした。
店内の1階は以前と変わらず、ほっと落ち着くぬくもり溢れる空間。新しいアイテムも入荷されている……と思わずよそ見をしながら、目的地へと歩を進めます。
1階の詳しい情報については、以前ご紹介したレポートをぜひご覧ください♪
【おとなの社会科見学・第4回(前半)】 “書く”ことを楽しむアイテム満載の文房具店カキモリ 「まつざきしおりの浅草橋歩き大作戦」No.3 衝撃! カキモリさんでの思い出この看板を目印に、階段を上がり中2階へ。ワクワクしながらお店に辿り着くと、そこには想像を遥かに越える素敵な空間が広がっていました。
美術館? 博物館? 美しすぎるディスプレイにうっとり……
お店に入ると、目の前には色の標本棚が。シックなグレーの内装と相まって、カラフルなディスプレイの美しさが際立っていました。
あまりにもハイセンスな展示スタイルに、思わず溜息が漏れてしまいます。
「イメージやレシピがわかりやすいように、という点を重視して標本棚のディスプレイを考えています。時期によって展示内容も変えているので、何度も足を運んでいただけるとうれしいですね」
取材に応じてくれたのは、同店のワークショップを担当する岡本さん。文房具大好きな岡本さんは、SNSを通じてお店の魅力を発信する腕利きの広報担当さんでもあります。
「実際にあるものを再現したり、頭の中にあるイメージから生み出したり、好きな本や絵画からインスピレーションを受けたり……色をつくる方法は幾通りもあります。『こんな発想もあるんだ』と楽しんでくれるお客様の姿を見ていると、こちらもうれしくなります」
なかには、〝カキモリにある色〟というお店ならではのカラーも。オリジナリティ溢れる数々のアイデアは、スタッフの皆さんで考案したそうです。
個人的に心を打たれたのは〝福澤さんがイメージする安川さんの色〟。改めて考えると「人がどんな色か」なんて考えたことがありませんでした。
「お友達同士やカップルで来店して、お互いをイメージした色をつくって贈り合う、という方もいらっしゃいますよ」と岡本さん。
「色で想いを伝える」というアイデアを、この標本棚からもらいました。
標本棚の隣には、スタッフさんがテーマを決めて配合したおすすめカラーの量り売りコーナーが。
スタッフの皆さんもお客様と一緒に楽しんでいることが随所から伝わるからこそ、お店で過ごす時間がより楽しく感じるのかもしれません。
店内には、たくさんのガラスペンが並ぶコーナーもあります。
光り輝くガラスペンは、職人さんの技巧が凝縮された逸品揃い。すべて手作業でつくられているため、一本一本の表情が異なるのも魅力のひとつです。
ちなみに、展示されているガラスペンはすべて試し書きOK。
「ガラスペンって、実はお手入れ方法がとっても簡単なんです。デザインやサイズも多種多様なので、実際に使ってみて自分にフィットする一本を見つけてみてください。取り扱っている製品はどれも一生モノで、長く使うほどに愛着が湧きますよ」(岡本さん)
作業を行なうインクスタンドは、まるでバーのようなカウンター。
「実はこちらのスペース、奥へ向かうにつれグレーがグラデーションになっているんです。今回のインクスタンドのテーマは〝融合〟。色と色の融合や、お客様とスタッフが一緒になって作業を行なうということを大切にしようと、この内装に決まりました」
インテリア、内装、製品。ありとあらゆるものに、たくさんのこだわりが詰まっていることを改めて実感します。
ちなみに、〝グラデーションな理由〟について、代表の広瀬さんが書かれた「note」に、そのステキな想いが綴られていますので、そちらも覗いてみてください。
気分は夏休みの自由研究♪インクを調合してオリジナルカラーを製作
いよいよ、お待ちかねのインクづくり。カウンターに並んだ「混色キット」を眺めているだけで、ワクワクが止まりません!
同店が実施しているサービスは、店頭で自ら行なう「ワークショップ」と、自宅から(サンプル)手紙を送る「inkstand POST」の2種類(どちらも税込み3000円/33ml瓶)。「色のカケラ」(写真や雑誌の切り抜きなど)を封筒に入れて送ると、その色を忠実に再現して配送してくれる「inkstand POST」は、遠方の方にも楽しめるシステムです。
ワークショップは予約制で、空きがある場合は予約なしでも参加できるスタイル。所要時間は調色45分+スタッフさんによるインク製作45分の約90分ほどを仮定し、スケジュールを立てると◎ですよ♪
まずは、自分がつくりたい色のイメージをスタッフさんに伝えます。
私が目指したのは、「手紙を書く際に活用できる赤みを含んだブラック」。かしこまった文書では赤色はタブーとされていますが、今回はあえて難しいカラーにチャレンジしてみることにしました。
調色は、17カラーのインクから2〜3種類を選び、1滴単位で好みの比率を探す作業。いざ開始すると、あまりの楽しさに時間を忘れて没頭してしまいます。
が、なかなか理想に色に辿り着くことができず……悩んでいると、岡本さんが絶妙なタイミングで優しくアドバイスをしてくれました。
岡本さんが親身に相談に乗ってくれることで、作業がさらに楽しくなってゆきます。
少しずつ、自分が求めていたカラーに近づいてきました。と、ここであることが発覚。今回目指していたカラーが、現在の自分の髪色と似通っていたのです。
「無意識にその日のファッションと同じ色になったり、その時期の心の状態に近い色が反映することが多いんです。これもインクづくりの醍醐味のひとつなんですよ」
思わぬ発見に、目からウロコがポロリでした。
「最近は、アニメやアイドルなどをイメージした〝推しカラー〟をつくる方も多いですね。みなさんのこだわりがインクづくりにあらわれていて、お手伝いしている私たちも一緒に楽しんでいます」
混色と試し書きを何度も繰り返しながら、イメージするカラーをじっくり吟味します。
求めていたカラーと全く異なる色も試してみたり、わずかな比率の差で変化する色合いを楽しんだり――。難しい! でも楽しい! を繰り返すうちに、ようやく理想のカラーに辿り着きました。
カラーが決まったときの達成感はひとしお。夏休みの自由研究を終えたときのような爽快感を味わえます。
調色の比率を岡本さんに伝え、あとはインクの完成を待つのみ。
完成したインクのオーダーシートは2年保管してくれるので、リピートオーダーをすることも可能です。
完成するまでの時間は、1階でショッピングを満喫♡
オーダーしたインクが完成するまでの時間は約45分。その間に1階でのショッピングができるのは、お店が移転してくれたからこその楽しみ方ですね♪
編集長は、調色の際のメモ書きに使用したボールペンをいたく気に入り即決で購入!笑 私はインクとの相性を考えながら、レターセットをじっくりセレクトしました。
オリジナルのインクにあわせて、オリジナルノートを製作するのもおすすめですよ♪
【おとなの社会科見学・第4回(後半)】 “書く”ことを楽しむアイテム満載の文房具店カキモリ時間はあっという間に過ぎ、お買い物終了とほぼ同時にインクが完成。岡本さんからボトルを受け取った瞬間、愛おしさが一気にこみ上げてきました。
「このインクに似合うガラスペンが欲しい」「手紙好きの友人にインクをプレゼントしたい」。そんな思いも駆け巡ります。
「一点モノのガラスペンから、気軽に使えるローラーボールペンやカラーライナーなどを取り揃えているので、ぜひお好みのアイテムを探してみてください。ギフトボックスも充実しているので、プレゼントを贈る際も気軽にご相談くださいね」
最後まであたたかく、寄り添うように接してくれた岡本さん、本当にありがとうございました!
ちなみに、同店で取り扱っているのは、万年筆に詰まりづらく、色を混ぜ合わせることができる独自開発の水性顔料インク。
インクが乾いたあとは耐水性もばっちりなので、手紙の宛名書きなどさまざまなシーンで活用することができます。顔料インクは固まりやすいため、ペン先がつまらないよう気をつけながら使用してくださいね♪
オーダーメイドインクは日常を鮮やかにする魔法のアイテム
「inkstand by kakimori」に身を置くと、自分の色や、自分が想う人の色がより鮮明にイメージすることができます。
そして、思いが込められたオーダーメイドインクには、日常を豊かにする不思議な力が宿っているような気がしました。
おうちで過ごす時間が増え、日記を書いたり、手紙を書いたりする機会が増えた方も多いのではないでしょうか?
私自身も手紙を送る頻度が増し、文字を通して思いを伝えることが楽しく感じるようになりました。
そして、〝私色〟のインクを用いると、以前よりもっと正直に思いの丈を綴ることができるようになったと実感します。
そんな魔法のアイテムを手に入れるべく、今度の休日は「inkstand by kakimori」におでかけしてみてはいかがでしょうか?
撮影/伊勢 新九朗
取材・文/牧 五百音