【閉店】橋のたもとで浅草橋を支え続けたいぶし銀とんかつ屋が半世紀の歴史に幕を閉じる。

昔から街にあって、ずっと気になっていたけど行ったことのない店って誰でもありますよね。もはや街の情景の一部になっているような。

今回、そんな店の一つであり、浅草橋人なら誰もが一度は目にしたことがある『とんかつ あづま』に行ってきました。

老舗で痛感する「いつまでもあると思うな、親と店」

お店は、JR浅草橋駅西口から徒歩2分ほどの左衛門橋を渡ってすぐのところに。赤いひさしに市外局番のない電話番号が昭和感たっぷりで渋すぎる。

「日替わり定食600円」ってこのエリアの個人店で最安値じゃないだろうか。この日は肉とイカの天ぷらの盛り合わせに玉子スープ、お新香付きとのこと。手書き文字がたまりません。

暖簾をくぐると店内は10席ほどのカウンターのみ。いぶし銀のご夫婦が営んでいた。

定番メニューはこの8品。カツ定食(800円)とロースカツ定食(1000円)の違いは大きさとのことで、迷わずロースカツ定食を注文。同行した編集長は日替わりをお願いした。

待っている間にお話を聞いたら、なんと今月(2019年6月)で店を閉めるとのこと! 入った瞬間に良店のにおいがプンプンしたので残念極まりないが、

「いつまでもあると思うな親と店」

という標語を改めて肝に銘じて楽しむしかないね。

サックサクで旨味溢れるロースカツと銀シャリ!

こちらのお店を営むのは、岡安嘉七さん静子さんご夫婦。蔵前でサラリーマンをやっていた嘉七さんが脱サラし、昭和29年に創業。それ以来52年間、暖簾を守り続けてきたとのこと。

半世紀の歴史が刻まれたまな板の上に鎮座する塊肉は、ひと目みただけで上質と分かる輝き。カットし、衣を付けて揚げる手際の良さは、熟練職人そのものです。

パチパチパチと……食欲をそそると共に、漂う芳しい香り。もうそれだけで白米が1杯いけそう。

ほどなくして供された「ロースカツ定食」はこちら。レトロな銀皿がうれしい。

キツネ色に輝くカツを一切れつかみ、一口噛むとサクっと軽快な歯切れの後、豚肉甘みと脂がじゅわっと口内に広がり、噛むほどに幸福度が加速! 柔らかいので食べやすく、臭みは一切ない。

半分は塩で、残り半分はソースでいただいたが、白米がまさに“銀シャリ”といいたくなるようなツヤッツヤで、カツと合うことこの上ない。脇目もふらず、一気に平らげた。聞けば肉も米も昔からずっと業者を変えず、良質なものにこだわっているとか

  • ロースカツ定食→1000円

地域最安値(?)な日替わり定食は満足度が高い

編集長が注文した、日替わり定食の肉、イカの天ぷら盛り合わせはこちら。

豚肉とイカ、野菜が薄衣をまとい、ジューシーなことこの上ない。醤油をかけて素材感を楽しみながら満喫した。

「キャベツはサービスね」

個人店ならではの優しさにほっこりしてしまう。

勢いづいて手作りの自家製というメンチカツも単品で追加注文。

これがまた肉々しい“ザ・メンチカツ”で、銀シャリとの相性抜群!なんで今まで来なかったか激しく後悔した。

  • 日替わり定食→600円
  • メンチカツ単品→400円

二人三脚で52年、街を見守り続けた

食べ終わってお茶をいただきながら、江戸っ子の夫婦漫才のようなかけあいが小気味いいお二人と少しお話をした。

「昔はこの辺りは何もなくてね……。夜の営業は飲むお客さんばかりで毎日賑わっていましたよ」

この地に根を張って、二人三脚で営みながら二人の子どもを育てあげ、職人肌の嘉七さんは今でも朝6時に来て仕込みを始めるという。

現在は夜営業はなく、平日の朝10:00頃から15:00頃だけ空けているとか。

「色々な人が来てくれて、話が聞けたのが楽しかったね」

そんな思い出話が余韻をさらにおいしくしてくれた。

閉店は残念だが、まだ間に合うので、是非一度暖簾をくぐって橋のたもとで街を支え続けたこの味を堪能してほしい。

撮影:伊勢新九朗
文:宮谷烈

店舗情報

再掲になりますが「2019年6月」いっぱいで閉店予定とのことです。気になる方はお早めにどうぞ。