ものづくりの街・浅草橋エリアには、大人がワクワクするお店がたくさん。「浅草橋を歩く」では、気になるお店をとことん深堀する企画“おとなの社会科見学”を連載しています。
第2回目は、浅草橋駅のほど近くに工場を構えビールを醸造する「VectorBrewing」。い“クラフトビール”の先駆者でもあるこちらのカンパニーで、ビールのアレコレを根掘り葉掘り聞いてきました!
コンテストに出品したビールがすべて受賞!クラフトマンシップが息づく下町のブルワリー
大人の社会科見学第2回目は、浅草橋にあるブルワリー「VectorBrewing」をピックアップ。
前半では、ファクトリーの全容やカンパニーの取り組みについてご紹介しました。
そして、後半は、製造するクラフトビールのことをもっと詳しくレポート。アテンドをしてくれた木水さんが、クラフトビールにまつわる様々な情報や豆知識を教えてくれました。
それでは、後編のスタートです♪
以前はお酒を販売する会社で働いていた木水さん。お酒のことを深く知っていくなかで、「お酒を売るより、つくるほうが楽しそう」と思いたち、神奈川県にあるブルワリーでビールづくりを学んだあと、このカンパニーへやってきました。
現在はヘッドブルワーとして活躍。よりおいしいビールをつくるため、研究・開発をおこなっています。
お話を伺ったオフィスで目に留まったのは、壁にかけられていたいくつものメダル。
実は「VectorBrewing」の製品が、2019年度の審査会で出品したすべての商品が入賞したのだとか!
「ジャパン・グレートビア・アワーズ2019」は、国内250銘柄のクラフトビールが出品された審査会。出品した4種類のうち、3つが金賞、ひとつが銀賞という、輝かしい結果を残しました。
では、ここからは、「VectorBrewing」のビールがこれほどまでに高評価を得る理由に迫っていきたいと思います♪
まずは、ビールができあがるまでの工程をおさらい。
最初に原料となる麦を粉砕し、でんぷん質を糖分に変え、濾過や煮沸などをおこない、麦汁をつくります。麦は製造するビールにあわせて厳選したものを使用。クラフトビールづくりが盛んな各国から取り寄せた何種類もの麦から、ブルワーが吟味します。
麦汁にホップや酵母を加えたら、お次は発酵工程へ。そして、1〜3週間の熟成期間を経て、ようやくビールが完成。樽詰め、瓶詰め作業をほどこし、私たちのもとへ届きます。
「香りと苦みをもたらすホップは投入のタイミングが重要。早く入れすぎると香りが飛び、逆に遅すぎると苦みが足りなくなります。また、水の硬度や熟成時間も風味を大きく左右する。レシピをほんの少し変えるだけで、ビールの風味は幾通りにも変化するんです」と木水さん。
取材時、木水さんは新製品のチェックをおこなっている最中でした。新たに生まれたクラフトビール“テイクイットイージー”は、柑橘系の香りが特徴的な飲み心地を重視したさわやかな逸品。
「僕が特にこだわっているのは“香り”です。まるでフルーツのようなフレッシュな香りがするビールをつくっていきたいですね。IPAやペールエールなどのビアスタイルにこだわりすぎず、自由な発想でより香り豊かなクラフトビールを生み出したい」(木水さん)
おうちで♪ お店で♪ クラフトビールをよりおいしく味わう
取材後、「VectorBrewing」のビールを実際におうちで飲んでみました!
購入したのは、看板商品である“ねこぱんち”と“ベクターブルーイング chic&elegance”の2種類。木水さんに、おうちでビールを楽しむコツを教えてもらったので、そちらもあわせてご紹介します♪
クラフトビールはとにかく香りが命!
香りを楽しむには、瓶のままではなくグラスに移すことが重要なのだそう。飲み口が広いワイングラスに注げば、香りをより一層強く感じることができますよ♪
キュートなネーミングの“ねこぱんち”は、苦みが強くパンチのあるIPAよりも軽やかで『猫パンチぐらいの苦み』だったことから命名。華やかな香りで苦みも強すぎず、クラフトビール初心者にも飲みやすい風味でした♪
“ベクターブルーイング chic&elegance”は、芳醇な香りとリッチな味わいが特徴。2種のホップを使用することで、ゴージャスな香りが醸し出されています。
“ベクターブルーイング chic&elegance”は透き通った琥珀色。“ねこぱんち”は白濁した黄金色。
クラフトビールは、製品ごとにビジュアルも全く違います。香り・味・性質などを比べながらビールを楽しむ時間は、とても贅沢な至福のひとときでした♪
「香りを楽しむという観点から、クラフトビールはキンキンに冷やす必要はありません……などと、色々お伝えしましたが、クラフトビールは気軽に楽しく飲んでもらえるのが一番! 新商品にも“テイクイットイージー”と名付けたように、『気楽にいこうぜ!』という気持ちで飲んでもらえるとうれしいです」と木水さん。
合言葉は“テイクイットイージー”。気楽に楽しく味わうのがなによりのコツのようです♪
ジャパニーズスタイルの確立が夢
最後に、木水さんに今後の展望をおたずねしました。「日本のクラフトビール界は発展途上。世界ではまだそこまで認知されているわけではありません。
なので、近い将来“ジャパニーズスタイル”が確立されることを目標に、国内のクラフトビール界を盛り上げていければと思っています。そのためにも、もっともっとおいしいクラフトビールをつくりたいですね」
新宿から浅草橋へ工場の規模を拡大した「VectorBrewing」。最近では浅草橋でも生産が追いつかず、さらに大きなファクトリーを構える計画が進行中とのこと。
「VectorBrewing」の挑戦は、まだまだ続きます。
▼スポット情報
- 店名: VectorBrewing
- HP:https://craftbeercompany.co.jp
取材・文/牧 五百音
写真/伊勢 新九朗