近年、プラスチックによる海洋汚染、生態系の変化、地球温暖化などの、地球の環境に関するニュースが頻繁に取り上げられています。
しかし、「環境に良いことをしたい! とは思うものの、具体的に何をすればいいの?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そんな方にぜひ訪れてほしいのが、2021年10月31日にオープンしたばかりの新感覚スポット『élab(えらぼ)』。今回の取材では、オープンに至った経緯やお店の楽しみ方などを余すことなく伺ってきました!
〝循環する日常をえらび実践する新たな拠点〟って?
ご紹介するスポットがあるのは、鳥越神社からすぐの場所にあるサイセーズビルの中。
はじめて取材に訪れたのは、9月のとある日。当サイトの編集長がお店の方にメッセージを送ったことがきっかけでした。
そのメッセージに応えてくれたのが、『élab』の広報担当であり、株式会社fogに所属している大垣さん。
なんでも編集長は、株式会社fogが立ち上げた『élab』設立のためのクラウドファンディングに興味を持ち、大垣さんが運営しているSNSに「ぜひ取材させてください!」とお願いしたそうです。
「私たちの取り組みに興味を持ってくれたことにとても感謝していますし、街の魅力を発信している『浅草橋を歩く。』さんとご縁が生まれたことも嬉しかったです」
オープン前のお忙しい時期にもかかわらず、どんな質問にもわかりやすく優しく答えてくださった大垣さん、本当にありがとうございました!
今回お話をうかがった場所は、お店の一番奥に位置するマテリアルラボ。同店のオーナーであり株式会社fogの代表・大山さんも、リモートで取材に参加してくださいました。
「株式会社fogは、人と社会が共生する循環型社会をデザインするカンパニーです。近年、日本でもサーキュラーエコノミーやサステナブルなどの環境問題に関する言葉が浸透しつつありますよね。ただ、言葉だけが先行して〝実際にはなにをすればいいの?〟と思っている方も少なくありません。そこで〝それらを実行する拠点を作ろう〟という話になり『élab』を設立したんです」(大山さん)
『élab(えらぼ)』という名前には、「循環する日常を〝えらび〟実践する新たな拠点を作ろう」という願いが込められています。
つまり、同店は、循環をテーマにした複合施設。ランチやディナーを楽しめるキッチンラボ、食材を計り売りするスタンド、ものづくりや物販などを実施するリビングラボ、植物を栽培するルーフトップガーデンなどの各エリアで、実践的に環境問題に対して行動できる先進的なスポットなのです。
「クラウドファンディングという方法を選んだのは、私たちの活動目的や趣旨を知ってもらいたいという思いからでした。すると、想像以上の反響があり、目標を達成することができたんです。私たちの企画に賛同や協力をしてくれる方がたくさんいたということは、大きな励みにもなりましたね」(大垣さん)
ちなみに、リターン品を送る際に使用された封筒は、本来であれば捨てられてしまうチラシや包装紙を再利用したもの。〝こういったひと工夫が環境保護につながるのだ〟ということを肌身で感じることができるのが、『élab』の大きな魅力なのです。
各エリアに施された創意工夫に感動!
『élab』が掲げている〝循環型社会の実現〟とはいったいどういうものなのか。そのヒントは、お店の至る所に散りばめられています。
たとえば、お店を入ってすぐの場所に位置するキッチンラボ。ここでは、食材の輸送で排出されるコストを削減するために近郊のオーガニックファームから仕入れた野菜などを駆使した料理を提供し、食を通じて美味しく楽しく環境問題と生活の関わりを考えることができます。
そして、メインテーブルにもひと工夫が。このテーブルは常滑の土を使ったレンガと天板を使用していて、天板はあえて継ぎ目を残し、移動可能な状態にしているのです。
「素材の良さを活かす、今後の使い道を考えて設置する。そういったことを念頭に置いて、インテリアを選んでいます。〝使い終わったから捨てる〟のではなく、経年変化を楽しんだり、別の楽しみ方ができるよう工夫することが〝循環型社会〟のあり方だと思っています」(大垣さん)
マテリアルラボも、用途は多岐に渡ります。あるときはオフィス、あるときはディスカッションの場、あるときはワークショップや物販……。さまざまなイベントが行なえるよう、ここにも可動式の家具が設置されていました。
「オープン後には、人気植栽ブランド『草人』さんが手がける植物の販売や、服のお直しやアップデートを行なう『桜三丁目』による「お気に入りの服をアップデートさせるお直し会」なども定期的に開催する予定です。今後は循環に関する古書を取り揃えた本棚なども設置しようと計画しています。私たちだけでなく、皆さんもワクワクするようなイベントをどんどん発信していきたいですね」(大垣さん)
次は、ルーフトップガーデンの見学……と階段を上がると、2階には洋服を販売するエリアが!
ここも『élab』? かと思いきや、実は2階は『余白』というアパレルショップ。しかも『余白』は『élab』の大家さんという関係性でもあるのです。
「『余白』さんでは、余り生地を再生させて上質な洋服を作っています。つまり、私たちの先輩であり、〝循環〟や〝再生〟をモットーにこのビルを運営する同志でもあるんです。私が今日着ているカットソーも『余白』さんの製品なのですが、とっても着心地がいいんですよ♡」(大垣さん)
実は取材開始早々、大垣さんのカットソーが気になっていた筆者。今度は、『余白』でお買い物&取材をさせていただこうと、密かに心に誓いました(笑)。
屋上のルーフトップガーデンでは、『élab』が栽培している稲や草木、『余白』が栽培している茶綿などが陽を浴びてすくすくと育っていました。両店のスタッフさんが談笑しながら楽しそうに水やりしている様子を眺めていると、なんだか気持ちがほっこり。東京にもこんな場所があったのかという安堵感と、東京に居ながらも環境に配慮した取り組みができるんだというポジティブな感情が湧き上がります。
「サーキュラーエコノミーやサステナブルという言葉は海外から発信されたものですが、実は日本には独自の〝循環型社会〟があったんです。島国で資源も人も少ないからこそ、あらゆるものを人々が協力しあって最大限活用する。名前こそありませんが、地方ではその習慣が今もしっかりと残っています。それを東京でも実践できるようにすることが『élab』の目標なんです」(大垣さん)
さらなる驚きと感動を味わったメディア向け内覧会
大垣さんからお店の魅力をたっぷり伺ってから約1ヶ月後。
無事オープン日が決定したとのご連絡をいただき、メディア向け内覧会に参加させていただきました。
内覧会では、オーナーの大山さんが今後の展望やオープンに際しての気持ちを表明。また、浅草橋という土地に対する想いも語ってくれました。
「ものづくりに対する支援も厚く、オープン前から〝応援するよ!〟と何度もお声がけいただきました。これからも、周囲の皆さんと一緒に日本ならではのサーキュラーエコノミーを実践していきたいと思います」(大山さん)
その言葉通り、『élab』では地元のお子さんたちと一緒にテーブルのレンガ貼りを行なったり、ミミズや微生物の力を借りて生ゴミを堆肥に変える〝ミミズコンポスト〟を作成したりと、すでに実践的な活動を開始しています。
活動に関するニュースは随時公式SNSで告知しているので、皆さんもぜひ参加してみてくださいね♪
大山さんの挨拶に続いて開催されたのは、森本シェフがこの日のために用意してくれた料理の試食会。
森本さんが手がけるのは、旬の食材を活かしたカレー・丼・サンドイッチなど野菜をメインとした3種類のランチ。普通のランチとは一線を画した、創意工夫満載のメニューがラインナップされています。
今回の試食メニューでは、なんとパクチーの根っこが登場!
実は私、パクチーとニンジンだけがどうしても苦手……だったのですが、パクチーの根っこを食べてびっくり!香りは葉よりマイルドで歯応えが良く、とってもおいしいのです!
「パクチーが苦手という方にぜひ食べていただきたい一品です。根っこは本来は捨てられる部分ですが、実は葉とは異なる魅力が詰まった素晴らしい食材なんですよ」(森本シェフ)
感動ポイントは他にもいっぱい。
おしぼりは『余白』の残布が活用され、使い終わった割り箸は新たな割り箸を作るための燃料となるのだそうです。
おしぼりはひとつひとつ形が違うため、なんだか愛着が沸いてしまいます。しかもこのおしぼりは持ち帰りOK。おうちでも、まだまだ活用方法が探れそうです!
キッチンラボに併設された計り売りスタンドには、薬草茶がずらり。今後はキッチンラボで使うお米や大豆なども販売予定だそうです。そして、お値段がとってもリーズナブル!
「スーパーにお買い物に行くような感覚で気軽に利用してもらいたいので、値段設定もかなり低く設定しています。計り売りなので、空き瓶などを持参していただけると◎です」(大垣さん)
試飲した月桃茶は、沖縄や九州に生息するショウガ科の植物の葉を煮出したもの。抗菌作用や冷え性対策の効果があり、女性にイチオシのドリンクなのだとか。
こちらも、計り売りスタンドで40円(1g)〜購入できますよ♪
おまけ
帰り際、「ランチも絶品ですが、ディナーもとってもおいしいんですよ! 今度はぜひディナーにお越しください!」と話してくれた大垣さん。
正直、今回の『élab』取材まで、私は「サーキュラーエコノミーやサステナブルって、なんだかややこしそう……」と勝手な先入観を抱いていました。
ですが、今回の取材を通じて、大垣さんをはじめスタッフの皆さんが楽しみながら環境問題に取り組んでいることを知り、そして、「私たちも日常の中で気軽に環境問題に取り組むことができるんだ!」という気づきを得ることができました。
どうぞ皆さま、一度『élab』に足を運んでみてください。これまでに感じたことのない驚きや発見、感動に出会えることをお約束いたします。
【élab】
〒111-0054
台東区鳥越2丁目2−7 1階
élab HP:https://elabtorigoe.tokyo/
élab Instagram:https://www.instagram.com/elabtorigoe/
撮影/伊勢 新九朗
取材・文/牧 五百音