まるでフォアグラな極上レバー串に舌鼓!焼き鳥界のニューウェーブにして本格派『ひらちゃん』の技に酔う

結局、私たちって焼き鳥が好きですよね。

「時短」だ、「ズボラ」だとライフハックな生き方を採用しながらも、なんだかんだで私たちは焼き鳥を食べに行く。

鶏肉をさばいて串打って、炭まで熾して焼き上げる――焼き鳥の世界は超地道で、超アナログ。

鶏を焼くならフライパンでもいいはずなのに、実際に職人さんが焼き上げると、モノが全然違うのだから不思議なもの。素人目には何が違うかもわからないのに、確実に結果に違いを与える“何か”。それを人は、「技」と呼ぶんです。

今回、ご紹介する『ひらちゃん』は、そんな職人の「技」を間近に感じられる焼き鳥の名店。

2年前にお店を開いたばかりにもかかわらず、連日、赤提灯のもとに笑顔のお客さんがギッシリ集う実力派です。

西口徒歩1分 赤提灯が目印のミニマルな焼き鳥屋

オフィスが並ぶ浅草橋駅西口の裏通り。

西口から徒歩1分という好立地ながら、うっかり見落としてしまいそうな裏通りに「ひらちゃん」はあります。

酒好きにはたまらない赤提灯が目印です。

ミニマルな店内はカウンター席が中心。お客さんもスタッフも自然と距離が近づく、あたたかい雰囲気のお店です。

そのアットホームさが逆に入りづらそうにも映るかもしれませんが、勇気を出して扉を開ければ笑顔の素敵なスタッフさんたちがお出迎え。

客層は若いカップルから仕事帰りのサラリーマンまで幅広く、案外、誰でも入れる気軽なお店となっています。4人がけのテーブル席もあるので、小グループでの利用もできますよ。

カウンターの中心には、備長炭を使用した焼き場。

職人・ひらちゃんが真剣に串と向き合っています。このライブ感も食欲をそそります。

ちなみに、ひらちゃんこと店主の平田侑城さんは、元・全日本柔道の選手。

26歳のときに現役を引退し、「何かひとつの道を極めたい」と一念発起。東京・町田の人気焼き鳥店にて5年の修行を積んで、この場所で独立しました。

そのため、店内には柔道選手のサインがたくさん。なかにはメダリストの名前も……!

まずはクラシックな店内で「赤星」を一杯!

焼き鳥のお供といえば、瓶ビール!(いつもだろ)

クラシックスタイルの店内には、やっぱり「サッポロラガービール」。通称「赤星」です。

1877年(明治10年)の誕生以来140年以上にわたって受け継がれてきた国産最古のビールブランドで、その厚みのある風味が特徴です。

この店構えで赤星は、もはや思想的なモノすら感じますね。

この日のお通しは、大根の煮物でした。

見た目は純和風ですが、実は中華系のダシを使用したユニークな風味。

つみれと鶏肉も入っていて、お通しからも店の“誠実さ”が伝わってきます。

看板の「レバー」はフォアグラのごとき上品な味わい

さぁ、「赤星」で静かにエンジンをかけたところで、本日の1本目の登場です。

こちらは、お店の一番人気「ればー」。

絶妙な火入れが自慢の逸品は、しっとりなめらかな仕上がり。

レバーらしからぬ繊細な風味に特製ダレのほのかな甘みがマッチして、フォアグラのような実に上品な味わいです。

実はこの焼き上がりでレバーを提供できるのは、お店が鶏の「鮮度」に強い自信を持っていることのあらわれ。

朝〆の大山・信玄地鶏を中心に扱う『ひらちゃん』だからこそ味わえるものです。

続いては「ささみ」。

表面のみに軽く火入れしたレアな焼き加減。

見事に串打ちされたささみの間からチラリとのぞく桜色が、色っぽいでしょう?
肉本来の風味をそのままに味わえるよう調味は最小限。

ここにも新鮮な食材への絶対的自信と、それを活かす“こだわり”を感じます。

こちらは「せせり」。

鶏肉の首のまわりについた肉ですね。

鶏は首をよく動かすので、筋肉質で弾力があって脂身も適度。

しこしことした歯ごたえもあって、いつまでも噛んでいたい……!

『熊本直送馬刺し』などのサイドメニューもスキなし!

うますぎる焼き鶏を前に半狂乱でビールを飲んでいたら、あっという間に瓶はカラに……。

プリン体も気になるお年頃の編集部は、ヒザが爆発する前にホッピーとハイボールにすぐさま切り替えることにしました。これぞ責任世代のリスクマネジメント。

「プリン体ないしね!」とお調子に乗ってハイボール(大)を頼んだら、結果、とんでもないことになりました。柔道家の(大)をナメてはいけませんね……。

ついでに焼き鳥も一時お休みして、サイドメニューを攻めてみることに。

こちらは「熊本直送馬刺」の極上赤身。

思った以上に刺身です。

やわらかくもプリプリとした馬肉は、たしかに生で食べねばもったいない!

こちらは「定番のマカロニサラダ」

マカロニ本来の甘みを活かした味付けを、粗めの黒胡椒でシメたセンス感じる一品

こちらの「自家製ぬか漬け」は、発酵のすすんだ本格派なお漬物。

このコクと酸味を感じる奥行きのある味わいは、一朝一夕で出来上がるものではありません。ひらちゃんの丁寧でストイックな仕事ぶりが伝わってきます。

「宮崎地鶏のたたき」

たっぷりのネギと自家製ポン酢で味付けた居酒屋らしい一品。

さっぱりとした味わいに、ゆず胡椒のパンチがキマってます。

焼き鳥後半戦 希少部位「ちょうちん」の衝撃

そして、いよいよ焼き鳥後半戦。

気づけば日本酒を頼んでいたのは、ひとえにわたしの心の弱さゆえ。

今回は超辛口の「播州一献」をオススメいただきました。

兵庫県播州地方で170年続く山陽盃酒造のお酒。酒米の産地としても有名な播州地域の希少米を含む数種類の酒米を原料に、創業当初から変わらぬ地元天然水を用いて手作りされたお酒です。

続いて焼き上がったのが、希少部位「ちょうちん」。

殻ができる前の未成熟卵(きんかん、はらだま)を頂点にレバーと、卵管(みち)で1本に仕上げるのが、ひらちゃん流。

部位の希少さもさることながら、破裂しやすい黄身を避けながらほかの部位に火を通すにはかなりの修練が必要なため、実力あるお店でしか扱えない一品です。ちなみに、普段はすぐに売り切れてしまうため、この時間帯で残っているのは非常に珍しいのだとか。

「頭から一気に食べる」のがオススメの食べ方ということで、実際にやってみると……。

プチっと潰れた黄身の風味が瞬く間に口内に広がり、レバーや卵管を包み込んでいくではないですか!!!!!!! レバーの苦味やタレで香ばしく焼き上げられた卵管の風味とマッチして、実に濃厚!

こ、これはクセになる……!

続いては「ひも焼き」。

レバーとハツのつなぎ目に当たる部位で、一羽からはごく少量しか採れないため、この1本のために、なんと“8羽”もの鶏が使われているそう。

脂のたっぷりのったジューシーさと弾力のある噛みごたえがたまりません。

さらに、希少部位「銀皮」。
砂肝の皮にあたる部位で、コリコリとした歯ごたえにしっとりとした舌触りが新感覚。

このほかにも、希少部位には「かた」「油壺」「ソリレス」などがあるそうですが、この日残念ながら売り切れ。次こそは……!

このほかにも、「ししとう」「銀杏」といった野菜串もいただきました。

どれもこれもおいしすぎて、食べるのをやめられない!

もう胃が破裂しそうなのに……!

しかし、ここで負けたら男が廃る!

シメも喰わずに店を出られますかってことで、オススメの「親子丼」もいただくことに。

とろっとろの半熟卵に鶏肉とネギがゴロゴロ入って690円って、ちょっと良心的すぎません?

甘辛なダシと鶏の旨味、やわらかな卵の風味が合わさって、酔ったカラダに沁みる……!

まとめ

飾りすぎず、盛りすぎず、ひたすら素材が本来持つ“美”と“味”の力を活かす。

そんな想いを感じる料理の数々は、相手の力を巧みに利用する“柔道”のアプローチそのものに感じました。

そんな質実剛健なスタイルでありながら、その料理や店構えにどこか「あたたかさ」を感じるのは、ひとえに“ひらちゃん”をはじめスタッフの皆さんの明るく思いやり深い人柄があればこそなのかもしれません。

まっすぐで誠実な焼き鳥に、チャーミングな接客。

10年通うなら、こんなお店がいい。

スマホひとつで何でも届く今だからこそ、あえて通いたい“本物”がここにありました。

余談ですが、じつは、編集部、2018年まではこの「ひらちゃん」の目の前の「ユニビル」に居を構えておりましたー!

文:山口大樹
写真:伊勢新九朗

このお店の特長
居心地の良さ
(4.0)
のんびり度
(3.0)
おひとり様
(4.5)
長居度
(3.0)