未来の自分に手紙を書くお店「自由丁」で、自分自身と向き合う不思議なひとときを過ごしました。

最近、テレビに出演したことでも話題のお店『自由丁』。番組を見た編集長が、「取材をしたい!」とつぶやいたところ、なんと先方さんから、「ぜひお店に来てください」とうれしいお返事をいただき、今回の取材が行なわれることになりました。

「いったい、どんなお店?」「何を提供しているの?」――そんな皆さまの疑問にお答えすべく、お店の魅力をたっぷりとレポートいたします♪

「手紙を書いたり、読書をしたり、休んだり、悩んだり」するお店って?

今回ご紹介する『自由丁』があるのは、浅草橋駅から徒歩約8分、蔵前駅から徒歩約3分の場所。

ちなみに、『カキモリ』を正面に右手に向かって3、4分テクテク歩くと、迷うことなくお店に到着しますよ♪

外観は、まるでおしゃれなカフェのよう。……が、なんのお店なのか、どんなものを販売しているのか判別することができません。

と、軒先には、「未来へお手紙書けます。読書ができます。休めます。悩めます。」の文字が。
やっぱりよくわからない……と思いながらも、居心地の良さそうな店内の雰囲気に招き寄せられるようにお店に吸い込まれていきました。

店内には、大きな本棚とテーブル、加えて、たくさんの手紙がディスプレイされています。
それでもまだ、お店の詳細がよくわからない……。

「初めて来たお客様も、同様に戸惑う方が多いんです。一言で説明できないのが、うちの店の良いところでもあり難点でもありますね(笑)」

私たちを出迎え、笑顔でそう語ってくれたのは、オーナーの小山さん(写真右)と店長の山本さん(写真左)。

出会って5分で、「お店の醸し出すスローで和やかな雰囲気は、この2人が生み出しているのか!」と気づきました。

ということで、小山さんと山本さんにたっぷりお話をうかがっていきます!

手紙を書きながら、自分自身の気持ちと向き合ってみよう

『自由丁』のメインメニューは、1年後の自分へ手紙を書く「TOMOSHIBI LETTER」。夢に向かう新しい朝、自分と語る暖かい午後の昼下がりなど、さまざまなシーンに合わせたオリジナルレターセットが用意されています。

手紙は『自由丁』が大切に保管し、1年後に書き主、または希望の送り先へ届くようポストに投函。購入者は、思うがまま手紙を書き、あとはお店の方に預けるだけでOKです。

例えば、少し立ち止まって自分の気持ちを整えたい人におすすめの「自分と語る、暖かい昼下がりの自由丁」セットには、「最近のあなたはどんなことに幸せを感じますか?」などの質問が記載されたリフレクションカードや、奥山鼓太郎さんという画家が書き下ろしたオリジナルポストカードなどが封入されています。

余談ですが、個人的に心惹かれたのは奥山さんの描いた自由丁の絵。奥山さんの絵は店内にも多数飾られているので、こちらもぜひ、じっくりご覧ください♪ どの絵も、色使いや構図が本当に素敵なんです。

美しい絵を眺めていると、インスピレーションが湧いたり、心が和やかになったり……不思議と自分の気持ちに正直になれるような気がします。

ひと月の日々を振り返る「Calendae Letter」もおすすめです。こちらはひと月の日々を書き込めるカレンダー型の未来へ送れるお手紙で、定期購入をすることもできます。定期購入をし、届いたレターを毎月自由丁宛に返送すると、購読開始月から1年後に、手紙を一冊にまとめてて送り届けてもらえるというサービス付き。そして、もうひとつ、うれしいおまけを楽しめるのです。

そのおまけとは、毎月末に開催される「月詠倶楽部」。店長の山本さんがパーソナリティを務める音声配信番組「自由丁FM」の限定ライブ配信で、定期購入者限定のイベントに参加できるのです。

参加者は自由気ままにコメント欄に書き込みながら、みんなと一緒にひと月を振り返り。この時間がとても心地良いと、参加者からは大好評を得ているようです。

「CALENDAR LETTER」はひと月分の購入も可能なので、まずはお店でお試しするのも◎です。

ちなみに、レターセットはすべてワンドリンク付き。蔵前の人気コーヒー店『コフィノワ』の日替わりコーヒーや、宮崎の名店『白弦堂』の有機煎茶を堪能できます。

私たちがオーダしたのは、絶品ドリンクとともに一編の詩を楽しむ「A CUP OF LETTER」。
「カフェで一杯のコーヒーを楽しむように、一編の文章を楽しむ文化があっても良いじゃないか」というオーナーの発想から生まれた、唯一無二のアイテムです。

ドリンクと一緒に運ばれてきたのは、一編のエッセイと、これまで読んだ人が文章を書き綴ったポストカード。

エッセイを読んで、ただその文章に思いを馳せる――。こんな時間を過ごしたのは、人生で初めてのことでした。

エッセイを読んだ感想は十人十色。ここに自身の思いを書き足して次の人に託すもよし、なにも書かずに家に持ち帰るもよし。このお店では、なにより〝自由〟を尊重してもらえるのです。

私は、一編のエッセイと、まっさらのポストカードがセットになった「A CUP OF LETTER」をいただきました。

そして、エッセイを読んで思ったことを気ままにポストカードに記入。内容は秘密です♡

次にこのセットを購入した人が、私の書いた文章の後にどんな言葉を書き記すのか、今から楽しみでなりません!

オーナーの小山さんがこのお店をつくった理由とは

「A CUP OF LETTER」に添えられていたエッセイを綴ったのは、オーナーの小山さん。小山さんが毎日綴るエッセイは「落書き帳」「落書きのかけら達」としてお店で販売されています。

小山さんのエッセイは、誰も傷つけず、読んだ人にあたたかな気分をもたらす不思議な逸品。〝癒される〟という言葉だけでは言い表せない、不思議な力が宿っています。

「読書は昔から好きでしたし、文章を書くことに気負いがないんです。ただ、言葉に対しての関心や美意識は常に持っていようと思っていますね」(小山さん)

小山さんは、東京理科大学出身。卒業後はアメリカに一人旅を敢行し、それまで独学で学んでいたプログラミングを本格的に会得するためスクールに通い、その後このお店を開店するに至りました。

手紙、エッセイなど文系のお店なのに、オーナーは理系。なんとも不思議な組み合わせのように感じます。

「そう言われると確かに不思議ですよね(笑)。このお店を立ち上げるきっかけは、シンプルに僕自身が〝考えたり、悩むための時間や場所が欲しい〟と思ったからです。あと、これからの社会では〝モノを売る〟ことと同じくらい〝コトを売る〟ことが重要になってくるとも感じていましたね」(小山さん)

理系と文系が見事に融合した発想で、このお店は誕生したようです。ところで、この場所にお店を構えた理由は?

「数年前までこの近くでルームシェアをして暮らしていたから、という単純な理由です(笑)。でも、住んでいた時からこの街の雰囲気が好きでしたね。今も周りのお店や住んでいる方々から、経営に関する多くのヒントをもらっています」(小山さん)

店長の山本さんも、かつては旅行会社に勤務し、静岡に暮らしていたという異色の経歴の持ち主。

「私は土地自体にこだわりがないんです(笑)。やりたいことがあればその場所に行く。このお店に携わったのも〝面白そう!〟という気持ちが主体です。ラジオのパーソナリティをやったり、新しいことにチャレンジしたり、とても楽しい毎日を過ごしています」(山本さん)

小山さんも、山本さんも、このお店を運営することに関して声を揃えて「最高」と言います。「訪れた人が笑顔になって帰っていく。それを見ることができて、最高っす」と。

おふたりの言葉通り、お店には来店者を楽しませる工夫が随所に施されています。そのなかで編集長が最も興味を惹かれていたのが「繋がる本棚」。

取材当時、当サイトを運営する伊勢出版が古本屋を開業する予定だったため、「繋がる本棚ってどういうこと?」と気になっていたようです。※現在、古本屋は柳橋の編集部の1階にオープン!自由丁さんとのコラボ企画を計画中です。

「繋がる本棚」のシステムは至ってシンプル。本棚に並んであるなかから好きな1冊を選び、代わりに自身が持参した1冊を本棚に加える。というものです。

漫画、エッセイ、新書、純文学……本棚には、「繋がる本棚」によって独自のラインナップが生み出されていました。

本棚には、小山さんや山本さんが厳選した本も陳列されているので、そちらも要チェックですよ♪

「繋がる本棚」を利用する際は、ひとつだけ条件があります。それは〝託した本にメッセージを添えること〟。メッセージが添えられていることによって、手にした本に一層愛着が湧く。

こうしたひと工夫によって、既存のお買い物とはひと味もふた味も違う喜びがもたらされているのです。

新しい世界へと歩き始めるすべての人に……

「手紙や本棚を利用しなくても、ふらりと訪れて、ただボーッとしたりひと休みするだけでもいいんです。なんたってうちは『自由丁』なので、なにをしていただいてもかまいません。近隣には素敵なカフェもたくさんあるので、テイクアウトしたコーヒーなどを片手にふらりと立ち寄ってください」(小山さん)

現在は情勢を見合わせ、平日は完全予約制、土日は予約優先の同店。公式SNSをチェックして、足を運んでみてくださいね♪

「次の仕事はなんだっけ?」「今日中にやらなきゃいけないことは……」
目先のタスクに忙殺される日々を送る私たちにとって〝自由な時間〟は貴重なものになりつつあります。

『自由丁』は〝答えを見つける場所〟ではなく〝悩んだり考えたりする時間をよしとする場所〟。お風呂に浸かるようにこの空間に身を置いて、心身をほぐしてみてはいかがでしょうか?

【自由丁】
〒111-0051
東京都台東区蔵前4丁目11−2
JR総武本線「浅草橋駅」より徒歩8分、都営浅草線「蔵前駅」より徒歩3分
営業時間:水~金曜12:00-18:00(予約制) 土、日曜、祝日 11:00-18:00
定休日:月、火曜(祝日は営業)

自由丁HP

取材・文/牧 五百音
撮影/伊勢 新九朗