創業明治44年!浅草橋の老舗「金井畳店」4代目が語る伝統の家訓〝三惚れ精神〟が熱い!!

皆さんのおうちに、畳はありますか?

西洋スタイルの衣食住が定着した昨今、畳のある住まいは年々減少傾向にあります。

「でも、畳って風情もあるし、機能性も抜群」「なんとか家の中に取り入れることはできないものだろうか……」

そんな風に考えた方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、明治44年から続く老舗中の老舗「金井畳店」に訪問! 畳に関するあれこれを、根掘り葉掘り聞いてみました。

この記事を読み終わったころには、あなたも畳の虜になっているかも!

創業から110年超! 老舗の畳店で伝統製法の畳作りを見学

今回お邪魔したのは、プリンセストラヤのほど近くにお店を構える「金井畳店」。お店の入り口には「創業明治四十四年」と書かれたのぼりがはためいていました。

明治44年(西暦1911年)ということは、今年で創業111年。老舗が多い浅草橋の中でも指折りの、老舗中の老舗です。

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作業場の軒先では、ちょうど4代目当主が畳作りの作業真っ最中。

い草の香りが充満する作業場は、冬なのにあたたかな雰囲気に包まれていました。

その理由は、4代目の金井功さんのお人柄が関係しているように感じました。

金井さんは、高度な技術を有する職人さんですが、口調や表情がとても優しくて柔和。私が勝手に思い描いていた〝THE・頑固な職人さん〟というイメージが大きく覆される、穏やかなお方です。

取材にお伺いした日は、大きな寺院から依頼され大量の畳を制作している超多忙な時期。

にもかかわらず、金井さんは作業をしながら制作工程をわかりやすく説明してくださいました。

「今回仕立てる畳の数は約200枚。私が手作業、弟子が中で機械作業をしています。畳を敷く場所によって強度を変えなければならないので、手作業の方が力の塩梅を加減できるんですよ」(金井さん)

作業する金井さんの手を見てびっくり! 手にはたくさんの傷があり、グローブのように皮膚が厚くなっているのです。

畳を仕立てるのがいかに重労働な仕事であるか、金井さんの手が物語っていました。

「今は9割の職人さんが機械作業で畳を仕立てていますが、私は昔ながらの手作りにこだわっています。道具も自分で作っているんですよ。ゴザを仮止めする為のまち針のような役割の道具には、ひとつひとつに〝金井〟の文字が刻印されています」(金井さん)

畳の仕立てはとにかく体力勝負。今回のように何百枚という単位を請け負うときは、施工場所と作業場を何度も行き来しながら、約1週間、朝8時〜夕方6時までお弟子さんたちとともに作業に勤しんでいるそうです。

「現在は2人の弟子と、会長である父とで会社を運営しています。弟子のひとりは別の畳屋から修行で来ていて、もうひとりは全く違う分野からこの業界にやってきました。畳職人になるには、職業訓練校に通いながら畳屋に丁稚奉公するというのがオーソドックスなルートです。私も高校卒業後に訓練校に通いながら様々な畳屋さんで修行をさせてもらいました」(金井さん)

4代目が大切にしているのは、2代目が説いた〝三惚れ精神〟

お仕事が終わったあと、事務所で改めてインタビューを再開。

事務所には、4代目が開発したスタイリッシュな畳が。モダンな内装と畳が驚くほどマッチしていることに衝撃を受けつつ、まずはお店の誕生秘話を教えていただきます。

「新潟の畳店で生まれ育った曽祖父が浅草橋に『金井畳店』の看板を掲げたのが始まりです。写真に映っているのは私の祖父ですね。祖父、父、そして私は生粋の浅草橋っ子。全員すぐそばにある育英小学校(お祖父様は育英尋常小学校)出身です」(金井さん)

「金井さんが4代目を継ごうと思ったのはいつですか?」という質問に、笑いながら「洗脳みたいなもんですよ」と答えてくださった金井さん。

「物心ついたときから〝4代目〟〝4代目〟と呼ばれてましたから、継ぐことは必然とは思っていました。でも、社長の息子だからといって厚遇されたわけではありません」(金井さん)

「職業訓練校と様々な畳屋で修行を終えて実家に帰ってくると、私の部屋がなくなっているわけですよ(笑)。与えられたのは、社員寮の窓なし四畳半の部屋。実家のお風呂も使わせてもらえないので、辨天湯に行かなきゃいけないんです。しかも、当時の月給は1万8千円。銭湯代を節約して、そのお金でビールを買って、体は洗濯機の浴槽で洗っていました。4代目の恩恵なんかありゃしませんよ。そのころが一番辛かったかな」(金井さん)

金井さんがお世話になっていた弁天湯については、下記の記事をぜひご一読ください。

1日の疲れを銭湯で開放しよう!浅草橋 駅チカ銭湯「弁天湯」

加えて、先代のお父様とは衝突も多く「つい最近も2年ほど口を聞かなかった時期があった」のだとか(笑)。

「父の時代はBtoBで薄利多売じゃないと経営が成り立たなかったんです。でも時代は変化して、私はBtoCに重きを置きました。どちらが正しい、間違ってるとかはないんです。代々の試行錯誤の結果、今があると思っています」(金井さん)

現在、息子さんは中学生。
「お店を継いで欲しいですか?」と尋ねると、「畳屋になるかならないかは自由だけど、代々受け継いできた家訓だけは守り続けてほしい」と金井さんは言いました。

「うちには2代目の祖父が残した家訓があるんです。それが〝仕事を愛する・町を愛する・妻を愛する〟という〝三惚れ精神〟。私は勝手に、うちの家紋はその〝三惚れ精神〟を表していると思っているんです。3つのハートが集まっているように見えるでしょ?」(金井さん)

この〝三惚れ精神〟こそが、「金井畳店」が100年以上の歴史を紡いだ所以ではないかと思いました。

金井さんの〝守り続けるもの〟と〝新たにチャレンジすること〟

最後に、今後の展望についてお伺いしました。

「本物の畳を表現していくためにも、手縫いの製法を後世に残したいですね。畳は土台がしっかりしていないとすぐダメになります。土台は、お寿司でいうところの〝シャリ〟の部分。この〝シャリ〟をうまく活かすことに、職人の技量が試されていると言っても過言ではありません」(金井さん)

「畳の〝ネタ〟の部分にあたるい草も、しっかりとした目利きで良質なものを選んでいきたいですね。今は産地偽装を防ぐために、国産のい草にはQRコードもついています。時代が進化しているからこそ、我々も進化を続けなければいけません」(金井さん)

金井さんが掲げている目標は、他にもあります。

「畳の可能性をもっと広げていくことも大事だと思っています。い草を使用した伝統的な畳ももちろんオススメですが、自社で開発した薄くて柔らかい置き畳は現在のライフスタイルに応じた利便性があります。普段のお手入れも難しくないんですよ」(金井さん)

ご紹介してもらった薄さ2cmの『金井畳店オリジナル畳』は、機能性も高い上にお値段もリーズナブル! 「これなら我が家にも取り入れられそうだな」と、編集長も私もその場で購入を検討してしまったほどです。

「こだわる人はとことんこだわっていただきたいので、畳のヘリの柄も2000種類以上用意しています。素材・サイズ・ヘリの組み合わせは無限大。予算やシチュエーションなどのご相談にもいつでも対応しますので、楽しみながら畳とお付き合いしてもらえたらうれしいですね」(金井さん)

そして、我々が特に気になったのがトレーとして使用されていたミニ畳。このミニ畳は、ワークショップで手作りすることができるのだとか!

「『モノマチ』のワークショップでもこのミニ畳作りを行なっています。コロナが落ち着いたら、自社でもイベントやワークショップをたくさん開催して、畳作りを多くの人に体験してもらいたいですね」(金井さん)

※さきほど渡したモノマチの記事をリンクしたいです。

このミニ畳、トレーやマウスパットなど、使い方も自由自在! 私は「以前『久月』さんで作った木目込み人形をこのミニ畳の上にディスプレイしたいな」などと想像を膨らませていました。

見て、買って、作って……大人も子どもも楽しめる人形のテーマパーク「久月」

「畳は和室に敷くもの」「管理が難しいもの」。そういった固定概念は『金井畳店』できれいさっぱり払拭されたような気がします。

「畳は自由に楽しむもの」「知れば知るほど魅力が深まるもの」――金井さんの思いを知ることによって、新たな感情が芽生えました。

おまけと店舗情報

取材後、金井さんから『すっぴんい草』というノベライズ品をプレゼントしてもらいました。

い草は、調湿効果・消臭効果・抗菌作用を有する超優れもの。「古書みつけ 浅草橋」には、この『すっぴんい草』だけでなく『金井畳店』の畳もインテリアに使用しています!

どうですか? 畳、なんだか無性に欲しくなってきていませんか?
一緒に、畳ライフを楽しんでみませんか?

撮影/伊勢 新九朗
取材・文/牧 五百音

「金井畳店」
住所:〒111-0053 東京都台東区浅草橋2丁目13-9
営業時間:8:00~18:00
※コロナ禍の影響で営業時間に変動あり

定休日:日曜日
お問い合わせ:03-3851-3802

金井畳店HP