[前編]浅草橋から日本酒の魅力を世界に発信! [SAKE Street]潜入レポート

弥生時代にルーツを持つ日本酒は、米と米麹、水を原料とした日本特有の酒だ。

高度経済成長期の頃は「中年男性が飲む辛口の酒」だったが、地酒ブームに始まり、新潟淡麗辛口や無濾過生原酒、そしてフルーティーな吟醸酒など、時代ごとにムーブメントが起こり、令和の現在は、より多様に進化している。

都市部では日本酒専門店が定着し、国外でも先進国では“SAKE”フリークが増え、現地で日本酒のコンペティションや酒造りも行なわれるなど世界中で注目を集めている。

その中で2019年11月に、ここ浅草橋で日本酒専門酒屋「SAKE Street」がオープン。小売だけでなく角打ちやオウンドメディアも展開する新しい日本酒発信所に行ってみた。

年間1000銘柄飲む日本酒のスペシャリストが常駐

お店はJR浅草橋東口から徒歩2分、風情のある柳橋エリアの路面にある。

広々とした店内に入ると、生酒を中心に管理された冷蔵庫や常温保存の棚に多彩な日本酒がズラリ。

この光景だけで日本酒好きは心が躍ること間違いない。

適切な温度で管理された冷蔵庫には買いやすい四合瓶と一升瓶も揃う。

適切な温度で管理された冷蔵庫には買いやすい四合瓶と一升瓶も揃う。

迎えてくれたのは、京都の老舗酒蔵、松井酒造の銘酒『神蔵』の前掛けが様になっている代表の藤田利尚さん。

もともと藤田さんは日本酒好きではなかったが、8年ほど前、滋賀県の地酒『不老泉』を飲んで開眼。金融機関で仕事をしながら年間1000銘柄は飲むほどのフリークになった。

「どの温度帯でも楽しめる食中酒というのが日本酒ならではの魅力です」

「どの温度帯でも楽しめる食中酒というのが日本酒ならではの魅力です」

さらに、好きが高じて日本酒学講師や、各国の消費者の嗜好や市場実態、文化、風習などに合わせた日本酒の楽しみ方を伝えるスペシャリストである国際唎酒師の資格も取得したという。

「日本酒の魅力を世界に発信するために」ゼロからの起業

そして、2018年5月に大学時代の仲間とともに酒ストリート株式会社を起業。

酒販店で働いた経験もコネクションもない状態からスタートした。

そのコンセプトは「日本全国に存在する優れた酒蔵と国内外の消費者をつなぐ」こと。

「いま日本酒はブームと言われていますが、それはあくまで一部の話。いまだに悪酔いする酒というイメージも根強くありますし、お酒の消費量でいえば全体の1割にも満たない状況です。造り手のマーケティングや伝え手不足など多くの課題もあります。そういった状況を改善し、今よりも日本酒が世界中で飲まれる環境を作りたくて始めました」

「日本古来のお酒なのに年々消費量が減っていく現状をなんとかしたい」と歩く語る藤田さん。

「日本古来のお酒なのに年々消費量が減っていく現状をなんとかしたい」と歩く語る藤田さん。

店舗の場所に浅草橋を選んだのは、ここ数年訪日外国人が多く、そういった人たちにも日本酒の魅力を知ってもらえる場を作りたかったから角打ちも始めたと話す。

全国の酒蔵から厳選した隠れた銘酒をセレクト

店内に所狭しと並ぶ日本酒を見てみると、どの酒屋にもある所謂ナショナルブランドの日本酒はなく、岐阜県の御代桜酒造『津島屋』や千葉県の東灘酒造『鳴海(なるか)』、山口県のはつもみぢ『原田』、京都府の白杉酒造『shirakiku』といった珍しい銘柄が目立つ。

そのセレクトは、大前提として「美味しい日本酒」。

且つ、いい酒蔵で、東京であまりみかけない銘柄、と非常にシンプルだ。

「せっかくいいお酒を造っているのに、マーケティングにリソースがない酒蔵さんをサポートしていきたい」と藤田さん。

「せっかくいいお酒を造っているのに、マーケティングにリソースがない酒蔵さんをサポートしていきたい」と藤田さん。

「全国に日本酒の酒蔵は1400以上ありますが、その中でも発信力があってメディアに取り上げられる著名なものではなく、小規模だけれど素晴らしいお酒を造っている酒蔵さんを応援していきたいんです」

そう話す藤田さんは、扱う14蔵(2020年3月時点)のほとんどに訪れるなど、きちんとコミュニケーションを取った上で扱っている。

レジ横の冷蔵庫に入っている日本酒は有料試飲が可能。

レジ横の冷蔵庫に入っている日本酒は有料試飲が可能。

おすすめを聞くと「全部です」と即答するところに、まがうことのなき日本酒愛を感じるが、決してマニアだけに開かれた店ではない。

日本酒の詳しくないビギナーでも例えば「アルコール度低め」や「華やかで飲みやすい」などの好みをいえば、その人それぞれに合ったお酒を提案してくれる気軽さがうれしい。

独自のWebメディアや輸出事業で広く発信

Sake Streetでは一般ユーザーへの小売りだけでなく、『〼 kuramae』や『居酒屋 庵治都』(閉店)など、日本酒にこだわった近隣の飲食店にも卸しており、今後はカナダやアメリカ、香港、シンガポール、台湾など海外への輸出事業も視野に入れているという。

「日本国内のアルコール消費量は今後も減少していくと考えられ、酒蔵さんへ海外へのマーケティング支援も拡充していければ」と藤田さん。

常連間違いなし!絶品和食とレア銘柄の日本酒が楽しめる隠れ家「〼kuramae」に行ってきた。

さらに、日本酒に関するWebメディアも展開。

お酒に関するWebメディアはライトでカジュアルなものが多い中、日本酒の基礎知識から、歴史や酒造りの哲学まで現地取材で紹介する酒蔵レポート、業界の新しいムーブメントや新制度への考察まで、専門知識を持つ書き手による高品質なコンテンツを発信。日本酒ファンだけでなく飲食業界人も楽しめる内容だ。

日本酒について楽しく学べるSAKE StreetのWEBメディア

日本酒について楽しく学べるSAKE StreetのWEBメディア

今後はより広く日本酒の魅力を伝えるために、多言語展開も考えているとか。

近日公開の後編では、日本酒の美味しさがより身近になる角打ちの楽しみ方を紹介する。

 

文:藤谷 良介
写真:伊勢 新九朗

【店舗情報】
Sake Street
住所:東京都台東区柳橋1-11-5 柳橋ビル1F
営業:火曜―土曜13:00〜20:00、日曜・祝日〜18:00
(※現在、時間短縮中)
定休日:月曜

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