多様化が進み、いま国内だけでなく海外でも注目を集める日本酒。
その魅力をより広く伝え、世界中で飲まれる環境を作るために始めたSake Streetは街の小売店でありながら、オウンドメディアや輸出事業など多彩に発信している。
浅草橋から日本酒の魅力を世界に発信!「SAKE Street」藤田利尚さんインタビュー後編では角打ちの体験レポートをお届けする。
店内にあるほとんどの日本酒が試飲可能!
Sake Streetでは店内で販売している日本酒の7割以上が試飲できる。
1杯300円〜(45ml)と気軽な価格なので、気になっていた銘柄やジャケ買い気分でピンと来たお酒を選ぶのも楽しい。
1杯ずつでも飲めるが、2、3種類がお得に飲める日替わりの「唎酒セット」もある。
この日、ラインナップされていた「神蔵 純米大吟醸 搾り違い」を注文。
「搾り」とは、日本酒造りの最終工程で、もろみの状態から液体部分を搾り出す作業のことで、「あらばしり」とは搾り工程で圧力をかけず自重で自然に出てくる最初のお酒、「中汲み(中取り)」とは、少し圧力をかけて搾られた途中の部分、そして「責め」とは、「中汲み」の後に強い圧力をかけて搾り切って出てくる最後の部分だ。
続けて飲んでみると、「あらばしり」はぴちぴちとしたフレッシュ感が際立ち、「中汲み」は味と香りのバランスが良く、「責め」は複雑味があり力強い味わいで、同じ銘柄なのに違った表情が体感できるのが面白い。
「『神蔵』の松井酒造さんは、京都の鴨川沿いのマンションの一階で造っているユニークな酒蔵で、華やかな香りと味わいの深さを両立しているのが魅力的です」
手が空いていれば藤田さんに酒蔵や日本酒の話も聞けるので、より味わいが深くなる。
自分でつけて好みの温度を探す燗酒が楽しい
冷蔵庫に入っている冷酒や常温の日本酒だけでなく、Sake Streetでは、セルフで“お燗”も楽しめる。
数ある中から選んだのは、藤田さんが日本酒に目覚めるきっかけとなった上原酒造の『不老泉 山廃純米吟醸』。江戸時代末期に創業し、伝統の木槽天秤しぼりで丁寧に醸す日本酒を守り続ける玄人好みの銘柄だ。
まず、日本酒が入ったちろりと温度計を酒燗に付ける。
温度が上がるまで待つ時間も楽しい。
藤田さんに聞いたおすすめの55℃になったのでお猪口に注いでひと口いただくと、
ふくよかな米の旨味が口中に広がり、思わず「おほっ」という声が漏れてしまう。
「同じお酒でも“味が開く”温度が異なり、温度帯によって感じ方が変わるので、自分好みの温度を探すのも楽しいですよ」
店の人や他のお客さんとのコミュニケーションが角打ちの醍醐味
日本酒だけでも楽しいが、口寂しい人にはしゃくし菜漬けやキムチ、たこわさなど酒肴に最適なアテもあるのがうれしい。
3品注文し、日本酒とともにゆっくり味わっていると、日本酒を買いに来たお客さんや試飲を楽しむお客さんが次々と店に。
近隣の飲食店や住人が中心だが、SNSを見てわざわざ他のエリアから買いに来る人も多く、この日も横浜や池袋から来たお客さんがいた。
簡易テーブルでのスタンディングなので、偶然隣り合ったお客さんと気軽に話せるのも角打ちの醍醐味だ。
また、店内にあるお酒は通販でも買えるので、どういったラインナップがあるか気になる人はホームページのECサイトをチェックされたし。
日本酒に関する実践的なセミナー・イベントも開催
さらに2階では、日本酒を英語でおすすめする為の「日本酒英語セミナー」や「日本酒ナビゲーター認定講座」など、不定期で日本酒に関するセミナーやイベントを開催している。
「浅草橋は縁がなかったですが、お店をはじめて、街だけではなく人の良さを実感しています。老舗のとんかつ屋さんやたばこ屋さんが色々な人を紹介してくれて繋がりが増えたり。今後はこの街から日本酒の魅力を世界に発信していきたいですね」と藤田さん。
日本酒好きも、これから学びたい人も、誰でも気軽に楽しめる新しい日本酒発信基地に訪れてみてはいかがだろうか。
文:藤谷 良介
写真:伊勢 新九朗
【店舗情報】
Sake Street
住所:東京都台東区柳橋1-11-5 柳橋ビル1F
営業:火曜―金曜13:00〜20:00、土曜、日曜、祝日〜18:00
(※現在、時間短縮中)
定休日:月曜