ちょっぴり気を遣いたい相手との酒宴は「古月(ふるつき)」で。

気の置けない仲間との酒宴はさておき、仕事仲間や取引先との突発的な飲み会では、「今日は何が食べたい気分です?」「お腹は減ってます?」なんて、文字通り腹の探り合いが始まることもしばしば。

肉でも、魚でも、野菜でも、正直どれでもいい気分なんだけど、相手を軽んじていると思われたくないがために、錦織ばりの質問ラリーの応酬を繰り返した経験、誰にでも一度はありますよね。

そんな時、とりあえずこの店の暖簾をくぐっておけば安心なのが、創作和食「古月(ふるつき)」。

肉、魚、野菜の幅広いレパートリーに加え、懐石料理ほど堅苦しくないカジュアルな雰囲気と、一般の居酒屋では味わえない旬菜と手間をかけた逸品が味わえます。

懐石料理の質と居酒屋の気軽さ

5月下旬の某日、日中気温は30度越えと、季節外れの真夏日にぐったりしながら迎えた夕暮れ時。照りつける太陽にうんざりした私の目に飛び込んできたのが、「古月」の二文字でした。

地下のお店に初見で入るのはややハードルが高かったものの、涼しげで上品な間口に惹かれ、細い階段を下へ下へ。

和風の小料理屋然とした店内かと思いきや、内部は和を基調としながらも、どことなくエキゾチックな雰囲気が漂う空間。

手渡されたメニューをパラパラとめくってみると、これまた和食の枠からは大胆にはみ出した多彩な料理がズラリと並んでいます。

炭火で焼いた肉料理があるかと思えば、天然本マグロが680円という激安価格で鎮座。その他もマグロの生ハム、クリームチーズの味噌漬け、手羽先にだし巻玉子……etc.と、どんな嗜好の持ち主でも許容できるフトコロの広さに驚かされます。

しかも、カウンターの向こう側には、ピシッと白衣を着込んだ料理長が、テキパキと立ち働いているのが見えます。

たたずまいからして、信頼できそうな予感……大!

カウンターとテーブル席を併せて、30名弱が容量の店内。うかがった日は月曜日だったにも関わらず、すでに7割がたが埋まっており、しっかりとお客さんに愛されているのも分かりました。

“映え”ること必至のお通し3種

普段は生ビールを頼むところですが、イキな雰囲気に刺激され、瓶ビールに切り替えて乾杯。

冷えたグラスに、とくとくとく……と細心の注意を払ってビールを注いでいると、見たこともないお通しが目の前に。

小鉢と小鉢の間に生まれた赤ちゃんとでも言うべき、小ぶりな器に盛られた3種のおつまみ。

私がイマドキ女子なら「かわうぃ~」と写真を撮りまくること必至の、インスタ映えするこのルックス。加えて中身も、ほうれん草のおひたしにホタルイカの沖漬けなど、呑兵衛感涙のラインナップとなっています。

正直、これだけでも中瓶一本を軽く空にできるポテンシャル。

そんじょそこらじゃ見かけない鱧(はも)料理も!

さまざまなメニューをようする同店でも、トップクラスの“推し”となっているのが天然の本マグロを筆頭にしたお刺身群。

写真をご覧いただければ分かる通り、鮮やかな色合いはもちろん、マグロは角がピシッと立っており、鮮度がビンビンに伝わってきます。

口に入れると、とろけるような甘みと共に、肉厚な食感が歯まで楽しませてくれる逸品。

さらに、他店ではなかなか見かけない鱧料理も発見!

プリップリな食感がうれしいお刺身と、香ばしさが絶妙な炙りの2種が盛られたひと皿に、気分はまるで高級料亭。

わさびを添えてピリッとした辛みを楽しむも良し、梅肉と併せて酸味とのハーモニーに舌鼓を打つも良し。この辺りで、すでに頬は緩みっぱなしです。

軽く酔いがまわってきたところで、相棒をビールから焼酎へバトンタッチ。

店名と同じ名前を持つ焼酎・古月は、さつまいもならではの甘みとさわやかな飲み口が魅力。存在感がありつつも、主役である料理の邪魔をしない名脇役といった味わいです。

シメでもいける絶品炭火焼き

初体験のマコモダケ!

かじった瞬間、口の中に広がる瑞々しさは絶品。味噌との相性も抜群でした。

居酒屋に行くと、ついつい頼みたくなるのがだし巻玉子。

「これ一つでその店の力量が分かる!」と豪語する美食家さんもいらっしゃいますが、その理屈が確かならば、この店は間違いなく本物。

食べやすいひと口サイズに切り分けられた玉子を口に放り込むと、じゅわ~っと染みだすおだしの旨味と甘み。大根おろしでアクセントを付ければ、もはやエンドレスに食べられてしまいます。

母の味というような親しみやすい美味しさというより、プロが丁寧に仕上げた職人の味。それはもう、お酒がますます進みます。

女将さんからも、「こちらは是非召し上がって欲しい」とオススメされたのも納得の一品でした。

入店して2時間弱。普通であれば、あとは軽いおつまみで雑談に花を咲かせるところですが、それを許さないのが同店の恐ろしさ。

お刺身とはまた別で、どうしても食べておきたいのが、名物の炭火焼き料理です。しかも、こちらのプレートは牛、豚、鶏の3種のお肉が楽しめるお得な一品。

さきほどまでの和食な雰囲気から一転、アメリカのダイナーでマッチョたちが貪り食っていそうなワイルドなルックスがたまりません。

しかも、ミディアム・レアに調整された焼き加減は、口に入れた瞬間にまったりとした上質な肉の旨味がダイレクトに伝わる絶妙さ。

野性味あふれる見た目とは裏腹に、こちらもこにくらしいほどに丁寧な仕事が垣間見えます。
宴会終盤にも関わらず、ものの5分で完食。いやー、呑兵衛にも別腹があるって初めて知りました。

まとめ

食べ応え、飲み応え満点のひとときに大満足で会計を済ませ、店を出ようとすると、店員さんからこんなプレゼントが。

散々楽しませてもらった上に、最後はお客の体を気遣ってヤクルトって……惚れてまうやろー!!

最後の最後まで丁寧な仕事ぶり、いやはや完敗です……。

ちなみに、実はさまざまな梅酒のレパートリーも同店のウリの一つとか。こりゃまた近々、乾杯ですな。

文:小柳太郎
写真:伊勢新九朗

このお店の特長
居心地の良さ
(4.0)
のんびり度
(4.0)
おひとり様
(3.0)
長居度
(4.0)