ご紹介するのは、浅草橋を代表する名店「人形の久月」。言わずと知れた浅草橋きっての老舗ながら「名前は知っているけれど、お店に入ったことがない」「なんとなく敷居が高そうで躊躇ってしまう……」という“久月未体験”な方もいるのではないでしょうか?
かくいう筆者もそのひとり。ということで、実際にお店を訪問して、どんな楽しみ方ができるのか体験してきました♪
まるで美術館!職人の伝統技法が光る日本人形をじっくり鑑賞
浅草橋駅東口を出ると、まず目に飛び込んでくるのは「人形の久月」の大きなビルではないでしょうか?
同店は、印象的なメロディのCMで全国区となり、江戸時代の創業以来多くのファンから親しまれる老舗人形店の本店。浅草橋エリアでも、ランドマーク的スポットとして知られるお店です。
もちろんその存在は知っているものの、実は筆者もお店をおとずれるのは初めて。風格あるエントランスをくぐる際、すこし緊張した心持ちになりました。
一歩足を踏み入れると、店内はとっても広々としていて開放感たっぷり。
取材時は11月だったので、店頭には年末年始に飾る羽子板や破魔弓がずらりと並んでいました。入店早々季節を肌身で感じられて、なんだか風雅な気持ちになります♪
お店に並ぶ日本人形は、名匠たちの技法や想いが込められた逸品ばかり。顔、姿、衣裳が異なる個性豊かな人形を鑑賞しているだけで、溜息が漏れてしまいます。
いざ購入したいと思っても、これだけの種類があるとどれを選んでいいのか分からないですよね。しかし、選ぶ際の最重要ポイントは“第一印象”の1点のみ。「お顔に親近感が湧く」「なぜだか分からないけれど心惹かれる」など、自分の感情に正直に選ぶことが大切なのだそうです。
同店の人形については浅草橋の粋人コーナーでたっぷりおうかがいしてきましたので、ぜひ、そちらもあわせてご一読ください。
江戸時代から令和へ。8代目が語る日本屈指の老舗人形店「久月」のあゆみ 専務取締役・横山久俊さんインタビュー2階は雛人形専用フロア。(時期によって異なります)こんなにたくさんの雛人形を鑑賞できるスポットは、日本でも数えるほどしかありません。
蜷人形や五月人形は、通常では子ども時代にしか鑑賞する機会がないもの。ですが大人になって改めて見ると、その表情や美しい佇まいから、日常でも取り入れられる所作や立ち居振る舞いが学べるような気がしました。
干支や人気キャラクターなどの人形や“和”なアイテムも充実♪
同店でショッピングできるのは、日本人形だけではありません。
毎年登場する干支の置物は、キュート系から個性的なものまでバラエティ豊かなラインナップからセレクトすることができます。
お客様の中には毎年同じシリーズを購入して十二支すべて揃えた人もいるとか。あなた好みの置物をチョイスして、ぜひおうちへ持ち帰ってみてはいかがでしょうか♪
老舗でありながら、人気キャラクターとのコラボレーションにも積極的。他では手に入りにくいレアなアイテムも取り揃えられています。
不定期にポップアップストアやイベントも開催されるので、公式HPをチェックして足を運んでみてくださいね。
日本人形は、海外からの観光客からも人気を博す品物。観光客に向けたお土産コーナーには、招き猫やこけし、赤べこなど、日本ならではのアイテムが揃っています。
中でも特に支持を集めているのは、兜や武将の甲冑のミニチュア。リーズナブルで精巧な品々は、歴史好きな方へのプレゼントにもピッタリです。
万華鏡は、お店の人も予想外だったという売れ行きなのだとか。確かに万華鏡って、子どものみならず大人も楽しめるグッズですよね。
家族や恋人、友人と一緒にレンズをのぞいて、癒やしのひとときを過ごしてみるのもおすすめです。
そして、最後にご紹介するのがこの公衆電話。
こちらは売り物ではないのですが、いまではなかなか見かけることのない旧式で、かつ現役選手。最近では、公衆電話の使い方を知らないお孫さんやお子さんにレクチャーするお客様の姿をよく見かけるそうです。
人形以外にも、見所満載なのが久月の魅力のひとつなのです。
気軽に参加できる『人形学院』に入学♪
3階フロアには、人形づくりの材料を販売するコーナーが。
実は同店では人形づくりにチャレンジできる「人形学院」を開校。受講コースも、通学や通信教育に加え、1日単位で参加できる気軽な趣味コースも用意されています。
これもなにかのご縁。ということで、実際に人形づくりを体験することにしました!
趣味コースでつくる人形は、試作教材の中からセレクト。押し絵、本格的な日本人形、流行りのキャラクターやマスコットなどの中からお好きなものを選んで、いざ入学です。
人形学院があるのは6階。3階で受付をしてから教室へ向かうと、中からは和気藹々と談笑する楽しそうな声が聞こえてきました。
今回作るのは、比較的作り方が簡単という干支の木目込み人形。まずは寒梅粉という、もち米を原料とした糊を水で溶きます。
新しいことにチャレンジするのは、いくつになっても楽しいものです。
寒梅粉という代物に触れるのももちろんはじめて。固さを調整しながら、慎重に練ってゆきます。
お次は、人形の土台となる木型をヤスリで滑らかにします。
土台から手を施すと、序盤から愛着が湧きます……。丁寧に作業を進めれば、愛おしさはどんどん倍増。生徒さんそれぞれがそれぞれの作品に向き合う空間は、程よい緊張感と和やかさがとても心地よかったです。
序盤は苦戦した作業工程も、コツを掴むと徐々にスムーズに。
木目込みとは、本体の筋彫りに布を押し込み仕立ててゆく人形。先生の手ほどきをうけながら、少しずつ人形に生地を埋め込んでゆきます。
作業に集中していたら、2時間の受講時間があっという間に過ぎていました。
筆者は不器用なため、写真の状態までしか進まず。しかし、もっと極めたい!もっと難しいものに挑戦したい!という気持ちが沸々と湧いてきます。
10年以上学院に通っている生徒さんは、なんと土台から手作り。高度な技術を獲得するには、まだまだ道のりは長いようです。
まとめ
教室には、生徒さんたちがつくった人形がたくさん飾られていました。
それぞれの人形がまとう空気は千差万別。作り手によって人形に命が吹き込まれていることを、改めて実感します。
『奥深い』という言葉では表現できない日本人形の世界。「久月」で、ぜひその魅力に触れてみてください。
撮影/伊勢 新九朗
取材・文/牧 五百音