常連が教えたくない店「酒蔵駒忠」は、浅草橋のリアル深夜食堂だった!

寒風吹きすさぶ1月某日、半年ぶりに浅草橋に降り立っていた。

仕事の打ち合わせが終わり、編集長に「いい店があるんですよ」と連れてこられたお店、酒蔵駒忠。

伊勢出版の事務所の裏手にある、見た目は何の変哲もない居酒屋だが、まさか2人共、このお店の虜になろうとは……。

活気あふれる店内、そこにいる客は皆笑顔

「こんばんは」、と引き戸を開け店に入ると、入ってすぐにテーブル席が2つ。奥を見るとカウンターとテーブルがいくつか……。

そのほぼ全てが埋まっている。若い女性店員さんがカウンターの空いている席に案内してくれた。いつもの瓶ビールで乾杯。

まず、出てきたのは、お通しの「イカと野菜の炒めたもの」で、これがピリ辛でビールが進む。

一息ついたところで店内を見回すと、カウンターには下ごしらえが済んでいる材料たち。客は皆、笑顔で賑やか。流れているBGMは演歌。オジさんになったからだろう、この店、ものすごい落ち着く。

店の成り立ちを聞くと、「駒忠」というお店は何店舗かあるのだが、この店は平成元年オープンで、浅草橋に30年以上店を構えているらしい。駒忠からは完全に独立しているが、看板は変えずにそのままで営業しているとのこと。店主は、和食店で修行を積んでからこの地に店を構えた。ちなみに、お店は、店主と娘さんの二人で切り盛りしている。そのほかにもいろいろと話を伺ったが、全部書くという野暮なことはしない。

是非とも、店主と、娘さんとおしゃべりに興じて欲しい。

何を頼んでも美味しいんだろうなぁと思わせてくれるつまみたち

この前、ここで飲んだと言う編集長に注文は任せることに。なるべく前回頼んだものを外してもらう。

最初にカニサラダ。結構な量のカニのほぐし身が乗っていて、キュウリ、トマト、レタス、キャベツとマヨネーズの相性は最高。うんうん、ベジファーストとか言うしな、と思いつつ食べていると、手造りがんもが届く。

大きい、そして美味そう。もみじおろしとネギ、甘じょっぱいタレが食欲をそそる。半分に割って口に運ぶ。生地は滑らかで、中のクワイがシャクシャクしていいアクセントになっている。

そこにアジ酢が置かれる。これは店主がオススメしてくれたものだった。見た目が一枚の葉を表していて、編集長が気付かず、「写真はもう大丈夫だから食べましょう」とか言い出すので、「いやいやこちらから見ると盛り付けが葉になっているんですよ」と返すと、「本当だ、すごい!」と写真に収めてもらった。

で、このアジ酢が抜群で、酢締めの魚が苦手なじぶんでも美味しく食べられたので、同じように苦手な方に是非試していただきたい一品だ。

酸っぱすぎず甘すぎず、間に薄切りの生姜とシソの葉が挟んであり、飽きずに食べられる。日本酒が飲みたくなるなぁ……。

アジ酢と同時くらいに出されたネギたっぷりのモツ煮を食べながら、「あぁ、どれもこれも美味い。もう、何を頼んでも美味いのは間違いないですよね、この店は」と編集長と盛り上がった。

メニューには載っていない美味しいものもある

ここで編集長からこそっと、「あそこにある手羽先がうまそうなんですよね~」と言われ、手羽先を確認すると、カウンターの端のほうにあったので、この人はあそこまでチェックしているのかと笑ってしまった。でもわかる! いいっすねと返し、チビチビとビールを飲む。

店主から、「里芋を煮て揚げたのがあるんだけど食べる? メニューにはないんだけど」と聞かれたので、2人してお願いしますと答える。

編集長は、「以前来た時に焼酎のボトルを入れたんですよ」と、出してもらっていた。

「里芋のオランダ煮ね」と、ゴロッとした里芋にキノコの餡がかかったものが出された。これは、もはや、見た目だけでわかる美味しいやつ! だ。

煮た里芋のホクホクしてねっとりした感じに天ぷらのサクサクした衣、とろりとした餡はほんのりとゆずの香り。

間違いなくおいしい。

このオランダ煮のように、駒忠ではメニューに載っていないものもあるので、店主に聞いてみるといい。美味しい出会いがあるかもしれない。

オランダ煮を食べ終えると編集長がすかさず、「あの手羽先もお願いします!」と注文する。でてきた手羽先はテリッテリで焦げ目が付いて、めちゃくちゃいい匂いを放っていた。

「本当は3本なんだけどね、2人だから4本にしておいたよ」と店主。2人で「ああ、この店最高! やさしい!」と合唱し、アツアツの手羽先にムシャムシャしゃぶりつく。甘めのタレにピリッとした辛さがビールによく合う。

はしっこのほうのパリパリ感も良し。「家の近くにあったら通うのにな」と呟くと、編集長も「ですよね」と返してきた。

「どうぞ」と、店主からサバのへしことキュウリの漬物をいただいてしまった。これも酒が進む一品だ。

客にアレないのと聞かれたら出してあげたい。の心構えはまさに深夜食堂

編集長に、この前来た時に何食べたんですか?と聞くといくつかメニューを言ってきたので、これはどうなんですか? アレは? と問うと、答えは全部「おいしかった」。

ダメだこの人、編集者なのに語彙が壊れてしまっている(笑)。

聞き方を変えて、どれが一番良かったですかと聞く。「鳥シューマイ!」、そのままの勢いで注文する。

出てきたのは、シューマイとは似ても似つかぬ米の塊のような見た目。

「?」と思いつつ食べてみると、中はシューマイの餡、まわりの米はもち米でムチムチした食感、餡の旨みを吸ってすごく美味い。

もち米を使っている理由が、本当は皮を細く切ったもので包むシューマイにしようと思っていたが他店と同じではつまらないという理由でもち米にしたと。

それ、限りなく大正解です! とにかく美味しいし、ほかで見たことがない。

ハムカツが届く。サックサクで醤油、ソースどちらでも合う。両方試した編集長は、醤油がオススメだそうで、自分はそれを横目に何もつけずに食べる。

シメは、これまた、メニュー表を見て、最初から気になって仕方がなかった「ガーリックライス」。シンプルな味付けながら、パラパラとした食感がクセになり、そして、なんだか呑兵衛に優しいお味がした。

そんな絶品ガーリックライスを2人で分け合いながら食べていると、目の前に味噌ラーメンが……。別のお客さんの注文したものだが、これも、客からの「味噌ラーメンつくってよ」ということで始めたのがきっかけだったらしい。本当に、リアル深夜食堂だ。

食べ終わって感想を言い合っていると、「朝ごはんに食べてください」と丸く握られたガーリックライスを渡される。ケチャップで味付けしてあるので赤い。常連は皆、持ち帰るらしい。編集長は、「朝が楽しみです」と喜んでいた。もちろん、自分もだ。

父娘2人で店に立つ。浅草橋の深夜食堂は今日も皆を笑顔にする

お会計をお願いする。「待っている間に、このお店めちゃくちゃ良い店ですね」と編集長に伝える。「娘さんも店主も、お客さんに愛されていて、本当に素敵なお店ですね」と編集長。

店をあとにすると、風が冷たい。暖かすぎる空間にいたからか、余計にそう感じる。

「どうですか、もう一軒。良いバーがあるんですよ……」と、編集長。

呑兵衛なおじさん2人は終電までお酒を飲むべく、足早にバーへと向かうのだった。

鯔背だね 粋な肴と 父娘酒

店舗情報

「酒蔵駒忠」
定休日:日曜
お問い合わせ:03-5687-9755


文:西川雅樹

写真:伊勢新九朗