「浅草橋 日本酒」でGoogle検索をかけるとトップにその名が挙がる飲食店、それが今回紹介する「醸ス(かもす)」である。
〝日本酒バル〟の冠を頂き、提供する日本酒とのベストマッチングな料理を追い求めるこだわりの姿勢が好評を呼び、多数のリピート客を獲得している。
そんな評判を、浅草橋の日本酒専門酒屋「SAKE Street」の藤田氏から聞きつけ、彼にも同行してもらっての呑み喰い取材を刊行した。
日本酒は一週間で入れ替わる
JR「浅草橋」駅の西口から徒歩十数秒という好立地にある「醸ス」。1階には馬肉専門店の「酔つ馬-YOTUBA-」、地下には、創作和食の「古月(ふるつき)」があるという飲食店ビルの2階に居を構え、大きな看板を掲げることで、吞兵衛や日本酒好きを魅きつけている。
オーナー兼シェフである桜井洋史さんは、バーテンやバリスタなど、様々な飲食業に携わりながら、満を持して、新橋にて、スペインバルをオープン(スペインバル「アドリアーノ」)。軌道に乗ってきたタイミングで、約4年前、念願だった「日本酒バル」を浅草橋にオープンさせた。
「当店は一週間で日本酒のラインナップを入れ替えています。常連さんでも、毎回違った日本酒を楽しんでもらいたいという想いがあります」。
と、とにかく日本酒にはこだわっていて、全国各地の旬な日本酒からマニアックな日本酒まで、常時、24種類の酒が厳選されている。
「毎週20種類以上は銘柄が変わるので 毎週来られる常連さんが多いです。セレクトは季節の酒を中心に季節感を感じて欲しいと思ってます」。
そして、普段は日本酒を飲まない方や若い女性にも飲みやすい、フルーティな香りがするもの、甘味と酸味のバランスの良いもの、米の旨味を味わえるもの、を中心に展開しているのも特徴的だ。
「日本酒=和食、というイメージが強いと思いますが、個人的には洋食もあわせることができると思っていまして、日本酒×洋食のマリアージュを追求しています」というだけに、オススメメニューには洋食を連想させる文字も踊る。
入店すると、手書きのホワイトボードが登場。その日のオススメがずらりと並び、まぶしい。
旬な和の料理と、ところどころに見られる洋の料理名が食欲をそそる。
清潔感あふれる店内は、カウンターとテーブル席があり、おひとり様からグループまで、多様なシーンでの利用が可能。という、店舗情報の前置きはこのあたりにしておいて、いざ、尋常に呑み喰らおう!
和食以外の料理へのこだわり
日本酒バルと言えども、わたくし伊勢は、「とりあえずビール」をこなさなければ次に進めないタイプなので(※痛風だけど)、ビールがあるのはうれしい。しかも、〝赤星〟なサッポロラガービールが置いてあるのは、吞兵衛にはこのうえなくありがたい。
グビグビとビールで喉を潤しつつ、お通しを堪能。上品な味付けのタケノコ煮はつまみながら、オススメメニュー含め、気になる料理を注文。
まずは、事前に調べた際に気になって仕方なかった、「ポテトサラダ」(500円)。
「アイスかい!」と、思わず現場でツッコんだのはいうまでもない。〝見た目も味も新しい新感覚ポテサラ〟というコピーがあるだけに、いまだかつて経験したことのないポテサラ体験があなたを待っていることは間違いない。上部に乗っているのは卵だよ。
と、そんな卵を分断してから、下部のポテトと共に頂く。
そこに、ゴージャスにかけられたソース、食感うれしいアーモンド、そして大ぶりの青ねぎが絡みあえば……、ほら、新感覚! ※具体的な味はお店に行ってご自分の舌で味わおう。
「炙り〆サバ」(600円)。ガツンと肉厚に切られた刺身がうれしい。
「あ、これはもはや日本酒だわ」と感じてしまったが、そこはグッと我慢をして、ビールとあわせつつ止まらぬ箸。
「マダイ刺 昆布〆」(700円)。
白身系の魚はその味わいが淡泊なだけに、昆布〆にすると抜群に美味いのだが、昆布がしっかりしみこんだマダイは絶品。「なんだかんだで和食を頼まれるお客様が多い」と桜井さんは言うけれど、そりゃ、こんな美味しかったら、取り急ぎは和食中心に攻めたくなるわな。
「鯵なめろう」(620円)。
海苔に包んで頂けば、「もういい加減日本酒だわ!」というモードに突入せざるを得ない。
ということで、日本酒へと切り替える。
SAKE Streetの藤田氏にセレクトをお願いしたところ、まず登場したのが、こちら「雅楽代(うたしろ)」。全国最年少の蔵元社長がつくった日本酒で、藤田氏曰く、「とてもバランスの取れたスッキリ・フルーティ―」とのこと。
日本酒ふくめワインなど、酒の味自体は続けて呑まない限りは理解できない伊勢としては、「兎にも角にも美味しかった」と、語彙力ゼロなコメントを残しておく。あと、確かにスッキリと呑みやすく、いくらでも呑めてしまいそうだった!
何を注文しても美味しいのがうれしい
「鶏ハムとパクチーサラダ」(600円)。
パクチーてんこ盛り。細かく砕かれたナッツとあわさることで、〝シャキカリ〟な食感が楽しい。鶏ハムはしっとりジューシー。
「生サンマ焼き」(600円)。
「まだこの秋、秋刀魚を食べていない!」ということで、初の秋刀魚焼きを堪能。ひとり1尾でもよかったと思えるほどに、すこぶる美味。日本酒が進んで仕方なし。
「厚揚げネギミソ焼き」(550円)。
厚揚げ好きとしては気になる一品。ネギミソ焼き、これはまさに日本酒のために生まれた料理ではなかろうか。やみつき必至の味わい。何なら、厚揚げなしで、「ネギミソ焼き」単体でのおこわり希望!
という流れで、これは私でも知っている、純米無濾過生原酒「雁木」が降臨。
日本酒のことならば藤田氏! と信じてやまないので、再びコメントを催促してみると、「厚みのあるジューシーな旨味が心地よい」とのお答えが。言われてみれば、さきほどの酒が〝軽め〟な〝スッキリ〟ならば、だいぶ〝重厚感〟にあふれた呑み口だった。こうやってプロフェッショナルからの一言を頂戴すると、いつもとは違った感覚で酒を楽しんで、なんだか妙に納得したりする。こうして文字に起こしておかないと、結局は忘れてしまうけれどー!
「いぶりがっこチーズ」(560円)。
同名の商品まで出始めているほど、認知されてきた食べ方だが、延々と酒を呑み続けられる無限酒肴であることを再確認した。
自慢の一品「コンフィ」をご賞味あれ!
桜井さんにオススメを聞いたところ、これだけは食べて欲しいと言われて登場したのが、「地鶏 塩こうじ コンフィ」(920円)。
「5時間ゆっくりと真空低温調理した鶏を使っています」とのことで、時間をかけて低温調理された肉だけに、その〝ホロホロ感〟は筆舌に尽くしがたく、いくらでも食べられそうな勢いだ。
ふりかけられている花山椒とハーブミックスが、味わいに深みを出していて、これぞ「洋食×日本酒」の極上マリアージュだと実感。あっという間に「雁木」2合が胃袋へと吸収された。美味し!!
まさに「醸ス」を代表する料理が「コンフィ」であることは確定だが、この流れでもう1品というか、もう1杯、「これぞ醸ス!」な酒を紹介したい。
「すりおろしレモンサワー」(570円)。
これ、最高っす。
何が最高って、飲食店で提供されるレモンサワーは、〝甘ったるい味〟であることが多いのだが、ここのレモンサワーは〝すっきり感〟が全面に押し出されていて、ほぼほぼ酎ハイに近い透明感があり、料理の邪魔をまったくしない、とてもつもなくうれしい味わいなのだ。
藤田氏とも、「このレモンサワーは美味い!」と意気投合し、「雁木」のあとはレモンサワーをひたすらに呑んでいた。
最後は、「何か炭水化物でシメたい」という私の要望に、「うちの炭水化物は実は焼きおにぎりだけでして」との答えが返ってきたため、唯一の炭水化物「焼きおにぎり」(●●円)を注文。
これがまた大きくにぎられた爆弾おにぎりで、最後を飾るにふさわしい一品だった。
美味い!
日本酒が呑みたくなったら醸スへ
浅草橋には日本酒にこだわった店が多く存在するが、醸スの特徴は、なんといっても店主が、料理と日本酒のマリアージュ的な勧め方をしてくれる点だろう。困ったときは、じゃんじゃん桜井さんに質問すれば、きっとベストなマッチングを提案してくれるはずだ。
ぐい呑みもイロトリドリのご用意があり、お好きなものを手に取って日本酒を楽しむことができる。ここで、豆知識をひけらかしておくと、「酒器の形によって味わいが変わるため、呑む日本酒に応じてセレクトを変えるのがオススメ」。って、もちろん、これも藤田氏の受け売りで、何がどんな日本酒に合うかどうかを現場で教えて頂いたが、丸っと忘れてきたので、気になる方はGoogle先生に聞いてみよう。
個人的には、三々九度や神社で御神酒を呑むときに使われがちな平らなぐい呑みが好みではある。
さて、相変わらずのヨレヨレ脱線を繰り出しつつ、最後にもう一点、気になる情報をピックアップして終わりとしたい。
そう、今回、「醸ス」の記事を書くにあたり、再び情報収集をしていたところ、「浅草橋メンチカツ」なるメニューを発見した。
〝浅草橋の名物にしたいチーズ入りのメンチカツです〟という説明文があり、「え、それ、注文したかったじゃない!」と、もれなくヤキモキさせられている。
桜井さん、オススメしてくださいよー!(笑)
この投稿をInstagramで見る
画像はないかと検索していたら、メンチカツを投稿しているInstagramを発見したので埋め込んでおく。
と、また訪問する口実ができたところで、醸ス吞み喰いレポート、これにて完結!
ご馳走様でした!
【Kamosu 醸ス】
住所:東京都台東区浅草橋1-13-8 森田ビル2F
電話:03-5829-8107
営業時間:17:00~23:00
定休日:日曜日、祝日
写真・文/伊勢 新九朗
今回同行して頂いた藤田氏が経営する浅草橋の日本酒専門酒屋「SAKE Street」とは?
「醸ス」と同じビルの地下にある「古月」とは?